神々の黄昏

   〜前回までのあらすじ〜 だね。


 ふっ、本当に人間っておかしな生き物だよ。

 まあ、俺たちが封印したがそんな風に設定したんだから仕方ない事だけど…

 おっと、口が滑ったね。


 やあ、俺はナロゥ。リラと契約した瘴気神さ。

 全く、自分の力がこれ程に消失ているとは思ってなかったよ。

 擬態イヴェ如きに遅れをとるなんてね。

危うく宿主を死なせてしまうところだった…


 …それにしても、カアクの選んだあの男、

一体何者なんだ? 人としての能力は劣る部類になるだろう。

 しかし、カアクの神力を強化しているのは、どういう事だ?


 俺の思い違いならいいのだが…

ユウトという、あの人間……

とよく似た匂いがする…


「あああ、リラさんっ! 連れ込んだなんて誤解だっ、それに変態でもありませんから!

…た、助けてぇください〜」

 僕はプライドをかなぐり捨て懇願する。

その切なる願いが…祈りが、はたまた命乞いが? リラに届いたのか、彼女は気の抜けた表情で銃口を下げてくれた。


 彼女の銃から『勘違いだったか…?』というナロゥの気が抜けた声が聞こえたのは、気のせいにしよう。

 神公認の変態とは認めたく無いし!


「リラちゃん、一応ユウトはアンタを助けたんや。変態に違いないけど感謝しときや」

 フォローになっていないカアクの言葉で、リラは「そうだったわね。助けてくれて有難う」と、素直に言葉を述べた。

 なんだろう…この気持ち。

表面上で良く耳にする『ありがとう』とは本質的に違う…何故か胸の中が熱くなるこの感覚……

 そう、それはきっと僕自身が決断して関与したからだ。


 いつの間にか彼女の手にしていた銃は、青いメダルに戻りナロゥが姿を現した。

 彼は不意に壁を背に立っているリラに向かい合うと、腕を壁に突き立てる。

 ––– 壁ドン……だと?

その、唇が今にも触れそうな状態で、リラがメダルを握る手の上から、自分のてのひらでそっと包むと彼は呟く。

「リラ、もうメダルオレを見失うなよ?」


 ……僕は自分を見失いそうです。

よくも僕の聖域でぬけぬけと、歯の浮くセリフを!


 リラは、無表情で「あなたも相当、鬱陶うっとうしいわね」とナロゥを払い除ける。

 しかし!彼女の頬はうっすら色付いていた!

 ……許すまじ、イケメン…いや、邪神よ。

僕が『魔封波』を使えたなら躊躇いなく使うだろう!


 さてと、冗談本心はこれ位にして…

「リラさんのメダルは青い色なんだね。ちょっと見せてよ」

 僕は、彼女の綺麗な青いメダルが気になっていた。僕の持つ赤いメダルもそうだが、光の反射で輝くその造形は美しく、リラのメダルを間近で見てみたいと思っていたのだ。


 しかし、険しい表情でカアクの静止が入る。「ユウト、他人のメダルは触ったらアカン。 ソレは罪の力や……他人の罪を持つ事はつまり『冤罪えんざい』になって、アンタは力を失ってまうんや」

 

 僕は自分のメダルを目の前にかざし「それは残念、このメダル…とっても綺麗だから、リラさんのも見てみたかったな」

 何気ない言葉だったが、カアクの表情がパッと明るくなると、僕の腕に抱きついてくる。

「ユウトったら、みんなの前で…嬉しいけど照れるやないのっ! ぽっ♡」

 

 …何の勘違いだ?どういった思考回路だとそうなる!? ああっ、リラさんが腐った蜜柑を見る様な視線で…


「もう二度と話しかけないで、このロリコン変態」


 ……皆さん、冤罪ってこういう事を言うんですよ。


      【次回予告】

 遂にユウトとリラに亀裂が!

いや、そんな関係じゃ無かったか…

そろそろ物語を進めないとね!

  次回!『イヴェとは』

            お楽しみに!!


––– 僕の歴史に、また新たなる1ページ!

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