削除覚悟

「ここは…お、お嬢様学校なんですね?」

僕はカアクに連れられ、たどり着いた校門にかかげられた学校名を見て呟いた。

 オリエント調の建物は太陽の光を受け燦然さんぜんと輝き、敷地を囲む堀に張られた水面が光の絨毯じゅうたんの様に、その美しさを際立たせていた。


–––– 聖シエスタ学院、名門中の名門、華の女子校…禁断の園だ。

 だめだ、緊張する…やっぱり3次元はフィギアに限る。おうち帰りたい…

 そんな心情が身体に出ていたのだろう。

「君、何か用かい?」

あからさまに不審者を見る目で、左胸に『小野』というネームプレートが輝く、ゴリマッチョの守衛さんが近寄って来たのだった。

「あ…ああ…ぼ、僕は…はあ、はあ…」

あまりの威圧感に、僕の声は上擦る。


 その刹那! 警備員小野さんのホイッスルが火を吹いた!

「変質者めっ!我が上腕二頭筋バイセップスの餌食にしてくれるわっ!」

 …って、はい? 何故突進してくるのですか? まさか!怨怒エンドが発症したのですか!?


「うわぁぁ!!」僕は腰を抜かし尻餅をついてしまう。ただ、幸か不幸か反動で跳ね上がった右足が突進してきた小野さんの腹筋アブスに突き刺さった!!

「変態め!これしきのことで…お?」

 次の瞬間、小野さんの身体は宙を舞っていた。これこそ突っ張る男の勲章、【巴投げ(腕無し)】という武の極みを、僕は身を持って知る事となった。


 小野さんはそのまま、堀に落ちてゆくと派手な水柱が立ち登った。

「ああっ!ワザとじゃあ無いんです!ごめんなさい!」

 僕は急いで駆け寄るも、筋肉の比重が水より重いのか、小野さんは浮かんでこない!


 その時!水面から現れる少女の姿が!?

「カアクちゃん?何してるんですか?」

 彼女の両手には何故か金色と銀色のクロスを身に付けた2人の小野さんが掴まれていた!


「おお、ユウトよ…あんたが落としたのは

この『金の小野オノ』ですか?それとも……『銀の……」


「コラッ! 聖闘士みたいにして遊ぶんじゃあ無い! 本物の小野さんを助けなさい、この邪神! それと全国の小野さんに謝りなさい!」

 そんなやりとりの中、カアクの背面で浮かび上がる小野さんの姿が!

 彼は溺れながら「燃えろ!俺の体脂肪小宇宙よっ!」と叫ぶ。

 ……お願いですから悪ノリしないでください。それに、これ以上贅肉がなくなると…

沈みますよ?

 その後、カアクによって引き上げられた小野さんは、気絶しているものの一命は取り留めたのであった。


 ––– もう…帰ろう。自称女神ことカアクちゃんと一緒に居ると、災いしか起こらない気がする……

 そんな想いを口にしようとした時だった。

「ねえ、あなた…ユウトって人?」

突然、草原を吹き抜ける風の様に、爽やかな声が背後から聞こえた。

 僕は振り向くと、そこには黒く艶めく長い髪に、清潔感漂う制服姿の女性が……

 その整った顔立ちを見て、『うん、そうだよ』という言葉は喉に詰まってしまい、僕は頷く事しか出来なかった。

 そのとたん高嶺の花子さんとも言うべき女性の表情は歪み、返ってきた言葉に僕の精神は打ち砕かれる事となる。

 きっとこれは僕の人生で一生癒えない傷となるのでしょう…


 彼女は透明感漂う声で、こう言ったのです。「最悪っ!なんで根暗そうなヒョロガリなのよっ!?」


……誰か作者を止めてやって下さい…


      【次回予告】

 失意に沈むユウト…

そんな彼に更なる試練が立ち塞がる!

襲い来るイヴェの軍団!

    次回!『排水はいすいじん (注3)』

            お楽しみに!!

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

(注3)『背水の陣』とは無関係だよ。

ちなみに背水の陣とは…説明不要ですよね!

※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※


––– 僕の歴史に、また新たなる1ページ!

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