投げてよこされた使命

   〜前回までのあらすじ〜 だよ…


 おっす!僕、ユウト!

世間一般で言うアニメオタクってやつだ。

今日は毎週楽しみにしている

怒気女鬼ときめき本気狩るマジカル埴輪はにわハオちゃん』の放送日なんだ!

 今日はハオちゃんのライバル、女庭メニハメオちゃんが登場するんだ!!

 僕、ワクワクしてっぞ!……って、あれ?

「おい、オタ……にいちゃん、しっかりせんかい!」

……目の前の少女……それは、夢では無かった事実を僕に告げた。

「すまんすまん、つい『神の左手』使ってもた。怪我は治しといたから安心しい」


「成る程、ただのお嬢ちゃんじゃない事は、よ〜く分かりました。 …誰かさんのお陰で砕かれかけた頬骨も、元通り治して頂いたみたいだし……って、ここは何処なんだ!?」


 辺りを見渡すと先程まで居たスーパーに違いはなかった。ただ、店内には薄紫色のモヤがかかり、先程まで溢れていた喧騒は無く、人の姿も誰一人見当たらないのだ。


 カアクと名乗った自称神様は薄ら笑いを浮かべると、「ここが、あんたの戦場や」と、

ポケットを弄り、何か小さな物を投げてよこした。

「ほんで、それがあんたの武器…有罪判決ギルティサガや」


 首をかしげながら僕は受け取った掌を開くと、そこには…

「…飴玉パインアメ?」

 うん、戦場や武器と言う意味は分からん。いずれにせよ、戦う為には確かに糖分カロリーは必要だ。いや待て、これは飴玉に見せた兵器なのか…それとも…毒?


 そんな中ふと、カアクを見ると様子がおかしい。

 口をあんぐりと開き、顔がみるみる赤く染まってゆく。

「ま…間違えてもた!今のはナシや!アメちゃんって、うわぁ…恥ずかしっ!」

 彼女はその後、スタスタと僕に歩み寄ると掌の飴玉をヒョイとつまみ、代わりに赤いメダルを置いた。

 そして無言のまま定位置に戻る。

どうやら飴玉は無かった事にしたいらしい。


「カアクちゃん?お兄さんは話が見えませんよ?どう云う事なんだろうね?」

 僕は掌に置かれた赤く煌めくメダルを観察すると、Guiltyギルティの刻印が施されており裏側には同様にSagaサガと描かれていた。


「うぉっほん…えーっとやな。知っての通り、この世はえらい事になっとる。そうそうアレや。『怨怒症候群ジ•エンド』ってあんたらが呼んでる病気が蔓延してるやろ。それをやな…あんたが救って欲しいんや」


 ここ数年で急速に広まった怨怒エンドと呼ばれる現象…突然怒り狂ったように人を襲ってしまうその症状は突発的に起こる。身体的外傷や脳にも異常は見当たらず、原因は未だ掴めずにいるのだ。

 それを僕に救って欲しい?この世を救う前に僕は59円の玉子を手に入れて、自分の食卓を救いたいのですが?


 そんな僕の切なる願いにお構いなく、カアクは話を進めてゆく。

「神様って人々の信仰が無いと弱ってしまうんや…この状況を何とかしたいんやけど、今の力ではどうにもならん。そこで、ウチと契約して欲しいんや!…ところで、あんたの名前教えてくれへん?」

 僕はもう少し人…いや、自称神様を疑うべきだったのかも知れない。まさか、名前を告げる事が契約完了を意味するなんて知らなかったのだから。

 「ふーん…ユウト君かぁ…クククッ……実にええ名前やないの」

 そう言うカアクの表情は…今でも忘れられません。神は神でも、邪神と云うのがピッタリな悪い顔をしていました。「契約完了や!」の掛け声と共にメダルには僕の名前が勝手に掘り込まれてしまったのです。


       【次回予告】

 遂に姿を現す『怨怒』の元凶!

力を手にしたユウトよ!立ち向かえ!

  次回!『力の行方と…』

            お楽しみに!!


––– 僕の歴史に、また新たなる1ページ!

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