第12話 推理ショーの幕開け

 生徒会室にいると、ハンコちゃんからのメッセージ。


『信じられない! 賢太郎くんはポッキーじゃなくてトッポ派なんだって! がっかりだよ!』


 信じられないだろうか? ポッキーもいいけど、トッポの方がわたしは好きだ。まさか、こんなとこでも賢太郎くんとお揃いとは! 嬉しいな嬉しいな!!


 続いて、こんなメッセージが。


『賢太郎くん謎が解けたんだって!!』


 はいはい、謎が――ええ! 謎が解けたの!!

 またポッキーとかトッポとか、よくわからない内容だと思ったから、とてもびっくりした。

 先を越されてしまったのか。

 智美と一香ちゃんにもこのことを告げると、驚いていた。特に一香ちゃんは悔しそうに奥歯を噛み締めていた。


 わたしたちは急いで、賢太郎くんたちのもとへ向かった。


 風紀委員のメンバーは、下駄箱の前にいた。どこかに向かう途中だったらしい。


「ああ、音葉か」

「な、なにしてるの」

知っているが、ここはすっとぼけておいた。

「実は謎が解けてな。今、犯人のもとへ行こうとしてるところだ。ちょうどいい、音葉たちも来るか?」

「そうさせてもらおうかな……」

 賢太郎くんは余裕そう笑っていた。解けたというのは、ハンコちゃんの勘違いではなさそうだ。


 下駄箱で靴を履き替え、校舎裏に向かった。猿渡くんは胸を張り、勝ち誇った顔をして一香ちゃんを見下ろしていた。一香ちゃんは苦々しく表情を歪ませている。自分が解いたわけじゃないのに、よくもまあ挑発できるものだ。

 校舎裏にたむろいしているやんちゃな連中の中に、お目当ての人物はいなかった。どこにいるか尋ねてみても、曖昧な返事で、どこにいるかわからないらしかった。


「もしかしたら」


 賢太郎くんは突然、歩き出した。

 校舎に戻り、廊下を進んでいく。軽音部の前までやってきた。

 すると扉の前に、探し求めていた人物がいた。扉に手をかけていたところだった。

「鍵がかかっているぞ」

 と賢太郎くんは声をかけた。

 声をかけられた人物はぴたりと手を止め、こちらに向いた。

 不二井くんは、わたしたちを見るとぎょっとしていた。そして左手に掴んでいたものを素早くポケットに入れた。何を隠したのだろう?


「今日は部活が休みだから、鍵がかかっている。花田さんから聞いてないのか?」

「…………」

 不二井くんは何も答えなかった。賢太郎くんはポケットから鍵を取り出すと、

「さっきまでおれたちが部屋に入っていたんだ。開けてやるよ」

「べ、別にいいって……」

「いや、開けてやるよ。おれは不二井に用があるしな」

「…………」

「中で話そう」


 鍵を開け、中に入っていく。不二井くんも渋々とついていった。


 話したいことがある。賢太郎くんは、不二井くんが犯人と導き出したということ。わたしも不二井くんが怪しいと思っていたが、結論にまで持っていけてない。


 賢太郎くんの推理をじっくりと聞かせてもらおうじゃないの。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る