第11話 閃き!
次の日の放課後、おれたちは風紀委員室で事件についてのディスカッションを行っていた。昨日の捜査で情報を得た。それを整理する目的もあった。
――のだが、なぜか話が脱線してしまっていた。
「何言ってるんっすか、ハンコ先輩! たけのこよりきのこの山の方が優れているに決まってるっすよ!!」
「なに血迷ったこと言ってるの! 絶対にたけのこの方が美味しいに決まってるじゃない!」
なんの議論をしてることやら……事件の話はどこにいってしまったんだ……。
猿渡とハンコはお互い引くことはなく、睨み合っていた。大丈夫だろうか、このメンバーで。
「ハリケンさんは、いったいどっち派なんですか!!」
「そうだよ、賢太郎くんはどっちっ!!」
「別にどっち派でもないって……」
本音を言うと、二人はブーイングした。つまらない回答だったらしい。
どっちの方がいいとかで争われ、たけのこもきのこもいい迷惑だろう。周りは敵対させようとしているが、我々が知らないだけで、二人はお互いのことが好きかもしれないのだ。そうだ、その可能性だってある。刺激せず、静かに見守ってあげてほしい……。
猿渡とハンコは、次にポッキーとトッポを議論に持ち出した。
また喧々諤々にやり合うのかと思ったが、二人はポッキー派で意気投合していた。
こいつら正気か? マジで言ってるのか? ポッキーだって――
「はあ~!? 普通、トッポだろうが! なに言ってんだ!」
「うわっ、先輩もしかしてトッポ派ですか……キモ……」
「可哀そうな人……」
散々な言われようだった。特に猿渡、キモはやめろ。本気で傷つくから。
こそこそと二人はおれの方を見ながら話している。言い合っていたくせに、結託しやがって。
「そんな話はいいから、事件の話をするぞ!」
トッポ派ということに納得できていないようだったが、渋々ディスカッションを再開した。
しかし話に展開はなく、すぐに頭打ちになった。まだポッキー派かトッポ派かのラリーの方が、長く続いただろう。
「ハリケンさん、もう一度軽音部に行ってみませんか?」
と猿渡は言った。
「それもそうだな」
おれもそのつもりだった。もしかすれば、お目当てのものが見つかるかもしれないからだ。
軽音部は今日まで休みだった。花田さんに部室に入る許可をもらうと、職員室へ鍵を取りに行った。
鍵を開け、軽音部へ入る。消臭剤の匂いは流石に消えていた。
ハンコはスマホを弄りながら、不満げに言った。
「……で、来たのはいいけど何をするの?」
「部屋の中を捜索してみようか」
「探しているものがあるの?」
「まあな。あるのかわからないけど、妙なものがあったらおれに言ってくれ」
猿渡もハンコも、その妙なものが何かと尋ねることなく、あたりを探りだした。彼らの名誉のため、確定するまでは口に出すことはできない。
這って床を確認し、部屋の隅に目を配り、ゴミ箱の中を探り、机の引き出しもチェックした。そう上手くは見つからなかった。まんまと彼らが残しているとも限らないが、感覚がマヒし慣れてしまえば、警戒は薄れミスを犯すものだ。
十分ぐらい探していただろうか。
棚の後ろを見ていた猿渡が、
「ん?」
と声をもらした。
「どうした?」
猿渡は棚の後ろに手を突っ込み、何かを取りだした。
「これなんすけど……」
人差し指と親指に挟まれていた。くしゃくしゃになった、筒状の白い小さいもの。
やっぱりあったか。これを探し求めていたのだ。
「先輩、これって……」
「猿渡が予測している通りだ。電子タバコの吸い殻だな」
「そうすっか……」
おれは猿渡から吸い殻を受け取った。
これでおれの推理が正しいことが証明された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます