第9話 繋がり?
軽音部には、まだ花田さんがいた。ロックくんこと石巻くんは帰宅したらしい。傷をつけられたギターがないということは、持って帰ったみたいだ。
お目当ては花田さんであったから、好都合だった。
「どうした、俺はもう帰ろうと思ってるんだけどな」
「すぐ済みます」
とわたしは言った。
「花田さんは、不二井くんと仲がいいみたいですね」
「まあそうかな」
「事件があった時刻に、不二井くんが中庭を歩いていたらしいんですよ。知ってましたか?」
「いや、知らないな」
花田さんは平静を装っていたけど、わたしは体が固くなったのを見逃さなかった。
「不二井くんがやったと思いますか?」
「理由がないだろうに……」
「本当にそうですか? 何か知ってるんじゃありませんか、花田さん?」
「知らないよ」
花田さんは額から一粒の汗を流していた。何かあると言っているようなものだった。
「なにか思い出したら教えてください」
「わかってる」
わたしが会話を終えた瞬間、賢太郎くんは一歩踏み出し、
「すいません、花田さん……口臭ケアって持ってないですか?」
と申し訳なさそうに言った。
「なぜ?」
「お昼、ニンニク料理を食べてしまって、今更気になってきたんですよ」
「ふっ、残念だが持っていなくてな」
「そうですか、わかりました」
軽音部から離れ、廊下に出た。
「ニンニクですか……」
一香ちゃんは一歩引き、鼻を摘まんだ。
「ハリケン先輩に失礼だろが!」
猿渡くんは怒っていたが、目いっぱい賢太郎くんから離れていた。君の方が失礼だよ……。
賢太郎くんは気にするなと笑っていたけど、内心では傷ついているらしく顔をひきつらせていた。
ニンニクだろうが、一度賢太郎くんの胃を経由するのであれば関係ない。わたしなら愛する。
愛の深さなら誰にも負けないだろうな……。ふふふ。
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