第18話 星

「見ろよ」

「えっ」

 スーが、葵の隣りで夜空を指さす。

「すごーい」

 葵よりも先に二人の周囲にいた子どもたちが反応した。

「あっ」

 そして、葵もそれを見た。無数の流れ星が、夜空を次々流れていく。それはものすごい数だった。

「すごい、何これ」

「お師匠様が言ったんだ。今夜夜空を見てみろって」

「・・・」

 それは本当にすごい数だった。流れ星がシャワーのように流れていく。それは壮大な光景だった。

「あっ」

 その時、葵がふと何かを感じ、胸に抱いていたアイコを見ると、その首に巻かれている女王の首飾りが光っていた。そして、またあの文字が浮かび上がっていた。

「何これ?」

 葵は驚く。

「何かに反応しているんだ」

 隣りのスーも首飾りを覗き込む。

「反応?」

「ああ、もしかしたらこの星の流れに反応しているのかもしれないな」

 スーが夜空を見上げた。

「星に・・」

 葵ももう一度夜空を見上げた。星は尽きることなく、夜空を埋めるように次々流れていく。

「これは漢字だな」

 スーが玉に浮き出た文字を覗き込み言った。

「漢字?スーはこれが読めるの?」

「読めないけど、これと同じ文字は見たことがある。失われた漢民族の文字さ」

「漢民族・・」

「昔、世界の中心に世界最大の帝国を築いていた民族さ。今はもう滅びてしまったけどな。昔、世界の中心には漢という巨大な国があったんだ」

「漢・・」

 そういえばこの文字をどこかで見たことがあった。

「そうだ、敵兵の掲げていた旗・・」

 葵は思い出した。お城を囲んでいた大群の中に、はためいていた無数の旗にこれと似た文字を見た。

「どうしたんだよ」

「うん・・」 

「お師匠様ならその文字の意味も分かるんじゃないかな」

 スーが言った。

「・・・」

 葵はもう一度カリカチュアと話がしたいと思った。

「あたしもう一度魔女様に会いに行ってくる。会えるかな」

 葵はスーに訊ねる。

「ああ、じゃあ明日行ってくればいい」

「うん」


「えっ、スーは一緒に行ってくれないの」

 次の日、葵がカリカチュアの下に行こうとすると、スーは一緒に行ってくれないと言う。

「ああ、今日はいろいろ忙しくてな」

「・・・」

 前回一度会ってはいるが、葵はやはり不安だった。

「一人でも大丈夫さ。あれで意外とやさしいんだぜ。お師匠様は。怒るとめっちゃ怖いけど」

 スーはそう言って笑った。

「・・・」

 そうは言っても相手は魔女である。やはり、葵は怯んだ。

「大丈夫だよ。いい人だよ。怒らせなければね。ははははっ」

 そう言って、カーリー・スーは自分の仕事へと行ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る