第3話 衝撃音
多くの来賓のお歴々も心地よくお酒の酔いが回り、よい感じで祝賀会も盛り上がっていた。
「あ、ありがとうございます」
葵は、もう一度カティアーティーに深々とお礼を言った。
ドーンッ
その時だった。それは突然起こった。物凄い衝撃音と共に城全体が大きく揺れた。天井からは、ぱらぱらと砂ぼこりが落ちて来る。カティアーティーと葵は驚き、天井を見上げた。大広間全体が、楽しそうな音楽や話し声が一瞬で消え、静まり返った。その場にいた全員が、何事かと、恐怖と不安の表情で天井を見上げた。
「何事だ」
カティアーティは、すぐに近くに控えていた近衛兵を見た。すると、直ぐに確認のため、そのうちの一人が走って大広間を出て行った。
いったいどうしたのか、何が起こったのか、人々が不安げな表情で顔を見合わせている、その時だった。
ドーンッ
再び、衝撃音がして城が揺れた。
「キャー」
大広間に、叫び声が響き、会場はパニック状態に陥った。葵も不安と恐怖で身がすくんで、その場を動くことができなかった。
「何事じゃ」
三長老の一人ポンじいが、カティアーティーの隣りに来て天上を見上げ叫ぶ。
カティアーティーの表情も、さっきまでの柔和で明るい表情からは一変し、硬く険しくなっていた。
「軍隊です。軍隊が城を囲んでいます」
その時、一人の兵士が広間に駆け込んできて息をする間もなく叫んだ。大広間に動揺のざわめきが起こる。
「どこの軍隊か」
直ぐに女王カティアーティーは、女王然とした毅然とした態度で叫んだ。
「それが・・・」
兵士が言い淀む。
「どこだ」
今度は隣りにいたポンじいが詰問するように訊いた。
「カント・・、軍」
「カント!」
大広間にどよめきが起こった。
「皇帝と名乗ったのは本当だったのか・・」
ポンじいの隣りにいつの間にか立っていた、国一番の知恵者と言われる三長老の一人、デクじいが呟くように言った。
「カントは世界の真理を解読したとかなんとか宣言していたが・・」
デクじいが呟く。
「絶対の真理、絶対の神と言うことか」
ポンじいがデクじいを見る。
「ゼウス・・」
デクじいが呟く。
「まさか・・」
「そんなもの・・」
「あるはずがない・・」
あまりのことにポンじいが切れ切れに呟く。
「絶対の神など、何を考えているのだ。世界は移ろうもの・・、世界はそうできているものだ。絶対の神などあるはずがない。そんなもの・・」
ポンじいが怒りを爆発させる。
「ジネイ」
カティアーティーが、すぐにすぐそばにやって来て控えていたジネイ将軍を見た。
「はっ」
その言葉だけで、全てを理解したジネイ将軍は、カティアーティーに一礼すると直ぐに部下を従え、広間から足早に出て行った。
「どうする」
ポンじいが誰に言うともなく言った。
「・・・」
しかし、その場に集ってきていた他の長老、宰相、神官、官僚たちも、誰もが言葉なく立ち尽くしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。