電車の中のひととき
バブみ道日丿宮組
お題:早すぎた宿命 制限時間:15分
電車の中のひととき
運命とか、宿命だとか、そんな甘い幻想を抱いたことはこれまでなかった。
けれど、毎日遭遇する人物はどうなのだろうか。
通勤してる人、通学してる人、通院してる人、様々な人が朝昼晩とところ狭しとうごめいてる。私もそんなうちの1人ではあるが、
「なんでどいてくれないの?」
揉め事に巻き込まれそうになる人になるのは勘弁してほしいところ。
「譲る、譲らないはその人の勝手だろう? おっさん元気そうだし立ってても大丈夫だろ」
どうやらというか、かれこれ数分間同じことで言い争ってる。
座ってる青年に席を譲ってほしいと迫ってるのが原因。青年が言う通り席を譲るかどうかはその人次第だ。別に必ず譲らなくてはいけないという法律はない。
女性専用車両とか、優先席とか、名前だけはいっちょ前で実のところ効力を持ってないものたちと同じだ。
「おじさんも歳だからね。長時間立ってると疲れてくるものさ」
「そんなの知らねぇよ。座りてぇならもっと空いてる時間を選ぶんだな」
ざわざわと周りが騒ぎ出す。
自ら危険地帯へと入り込む趣向の人はいないだろう。
だけど、今はラッシュアワー。離れたいと思っても離れられない状態だ。私も離れたい。へんな視線を浴びる前に席から立ち上がりたい。
でもなぁ……。
「……んっ」
青年がいうように空いてる時間であれば少しは別なんだろうけど……今はどうあがいても混む。回避するには時間をずらすしかない。
「第一におっさん、見た目40歳ぐらいだろ? そのくらいから椅子に座りてぇってのは足腰弱すぎんじゃねねーか? まぁ座ってる俺がいえたことじゃねーがな」
大きな笑い声が聞こえる。
どうしてこんな時に、そんな人が隣に座ってるんだろうか。ここはあれか? 私が颯爽に譲るべきなのか? いや……今日は疲れてるしきついなぁ。
「あぁ今年でアラフォーになる。だからこそ、足をいたわりたくてね」
どうしてこのおじさんはもう少し我慢という言葉を知らないのだろうか。うろ覚えだが前にもこんな風に言い争ってるのを聞いた気がするなぁ。
「じゃぁ鍛えるのにちょうどいいな」
そういって青年はスマホに集中したようで、そのあとおじさんがいくら話しても聞く耳を持たなかった。それで若干空気が重くなったものの、おじさんが降りる駅で降りた後はいつもの電車内の空気になった。
ちなみに青年はといえば、私と同じ駅で降りる。かといって交流があるわけじゃない。見たことがある。お互いが覚えてるかもしれない関係だ。
青年がこういった行為に及ぶのであれば、私が時間をずらすべきなのかもしれない。座れるし、問題を起こす人の数もすくなくなる。
「はぁ……」
でもなぁ……帰る時間を遅くするのは嫌だなぁ……。
電車の中のひととき バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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