告白

バブみ道日丿宮組

お題:素朴な撃沈 制限時間:15分

告白

「凄い玉砕風景だったよ」

 教室に入った瞬間に彼につぶやかれた。

「そんな風に思われる筋合いはない」

 だって、振ったのはこいつだから。

「私だって気持ちが追いつかなったの。だから仕方ない」

「それにしたって、駅前の人通りで告白するか?」

 彼に言われて、告白シーンを思い出す。


 外灯で照らされた駅前、キャッチセールやら、恋人やら、仕事人やら、学生やらと、いろんな人がいる。そんな中で私は今できる最大の格好で彼を待ってた。

「待った?」

 そういう彼は制服姿のままだった。

 少し走ったようで、息が荒かった。運動部のエースなのだからこれくらいでバテるということはないだろうけど、走ってくるようなことなのかと思えば、少し嬉しかった。

「それで用事ってなんなの?」

「えっとさ、これ受け取ってくれない?」

 ポケットから、とあるネックレスを取り出して、チェーンを持つ。ゆらりゆらりと揺れるネックレスに埋め込まれてるのは赤い宝石。もちろん本物なんかじゃない。いや……ある意味で本物かもしれないそれは誰かにあげることで意味を持つ。

 この場合は、永遠の愛。

「それは……えっと、前に話してくれたことのある例の遺産だよね? 赤いしさ」

「そうだよ。これが私の今日の用事」

 夏のせいなのか、恥ずかしさのせいなのか、暑くてどうにかなりそうだった。

「わかってるよね?」

 彼は真剣な表情でこちらを見てくる。

「受け取れないよ。僕は女装趣味のかわいい男の子が好みなんだ」

「知ってた」

 彼の愛は、異性には届かない。いや……同性でもほとんど届かない。

 この世界にはいろんな人がいる。特殊な性癖を持つ人がいるように、好みが特殊な人もいる。今回はたまたま彼がそういう人だったということでしかない。

「告白したら、君のことだから受けてくれるかもしれないって思ったんだ」

「それは少し嬉しいかな。でも、ごめん。無理なんだ」

 それから何口か言葉を作って、彼はその場を去ってった。

 私はといえば、きれいな夜を見上げて、雨を降らしてた。


 それが私の告白だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

告白 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る