山登り

バブみ道日丿宮組

お題:くさい奈落 制限時間:15分

山登り

 この先にあるのは地獄かあるいは天国か?

「準備はできてるか?」

 同行者にいうと、

「で、でぇじょぶ!」

 大丈夫じゃなさそうな回答がきた。

 なんにしても、この穴から臭いが漂ってくる。動物たちの尿から発生したアンモニアか、虫の死骸、フンなどが腐敗したものか。

「この臭いどうにかならない?」

「穴は奥に続いてるからね。先に進むなら降りながら奈落の先にいかなきゃいけない」

 どこかに横穴があって、そこから地上にすすめる道が発見できるかもしれない。臭いということはそこで生活してるという意味もある。

 それが人間でないことは確かだ。

 動物がいるというのであれば、多少は安心できるが……猛獣でないことを祈ろう。

「さぁ、いこうか。手を掴んでね」

 同行者に手を差し伸ばすと、勢いよく握りしめられた。

 男にはない女の優しい感触がした。

「うっ」

 気にしちゃダメだ。これから何分、何時間、何日と一緒にいる相棒なのだから。


 ーー数時間前


 俺はインストラクターの導きのまま、登山してた。ツアーということもあって人の数も多い。熟練者のような大男やら、きしゃな学生。小さな子ども。

 参加してる中で1人できたのは俺だけかと、見回してみれば、居心地が悪そうな女性がいた。

 赤ジャージを履いた女子大学生くらいのこ。あっちをみたりこっちをみたりと、やたら視線を浴びることをおそれてるようだった。

 俺と目が合うと、急いで彼女はうつむいた。

 そこから二人一組になってロープを結ぶということになって、結果彼女とペアをくむことになった。そんな気はしてたよ。

 そうして俺たちは山を登り始めた。初心者にも優しいということで、坂道はそんなにきつくなかった。気温は登ってくうちに少し冷めてる気がする。

 山の上は快適な気温であればいいなと、このときはまだ楽観視してた。

 それで個々のスピードで登り始めた山は、必然的に見知らぬペアというのは話題がないため、俺達は遅かった。

 向かうところは山頂で道なりだから、問題はないはずだった。

 そうだった。

「あっ、あそこにカナリアが」

 一瞬の気の緩みが、足をとり、そのまま獣道へと彼女はたれて、助けようとした僕もまたループにひかれるがまま、倒れ込み。転んでしまった。

 そして気がつくと、俺達は薄暗い穴の中にいたのであった。

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山登り バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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