第21話「ドイツ語で言えば君には伝わらない」


家でミスタ〇ドーナツを食べながら、最近ちょっと悩んでいることをマリアに持ち掛けてみる。



「この部屋、さすがに狭くないか?」



マリアは居候の身とはいえ、もうこの部屋の住民だ。


向こうはどう思ってるか知らないけど、少なくとも、俺はマリアのことを恋人だとは思っていない。


そんな関係の男女が、ワンルームで二人暮らしとは、いかがなものか・・・というお話。



「No such thing」(和訳:そんなことない)


「いやいや、どう考えても狭いでしょ?」


「What do you want to say?」(和訳:何が言いたいの?)


「まぁつまり、引っ越さないか? って話。OK?」


「・・・?」



えぇ・・・。


引っ越しって英単語、全然思いつかないのだが。


某有名グ〇グル翻訳さんで調べても、moving としか出てこないし・・・。


ってか、それで合ってるのか?



「む、ムービング?」



恐る恐る言ってみる。



「move?」


「イエス」


「ンーフ」



なんかよくわかんないけど、とりあえず伝わったみたいです。



「んで、さすがにワンルームはありえないだろ? せめて部屋が二つある物件を探したいよな」


「・・・?」



なぜ伝わらない()


とりあえず、物件をネットで検索してみました。



「部屋が二つ以上あるのは・・・やっぱ家賃高いなぁ」



家賃はどこも5万円台といったところ。


まぁ今より部屋の数が増えるから、純粋に家賃も上がるのは理解できるけど、やっぱキツいとこあるよこれ。



「マリアはどう思うか?」



なんか乗り気じゃなさそうだけど、マリアの意見も聞いてみよう。



「I have one request」(和訳:私の要望は一つ)


「ん? なんだ?」


「イヒッ メヒタ メティア シュラーフン」



あーー、これは分からないやつですね。


んでも、シュラーフン(schlafen)は知ってるぞ。


確か、ドイツ語で“寝る”とかそんな意味だった気がする。


んで、最初のイヒッ(ich)ってのも、英語で言うところの“I”(私)みたいなもんだろ?


そんな風に、どうにか和訳しようとしたが、まぁ無理なんですよね。


中間の単語が全くわかりません。



「あの、マリアさん? 俺ドイツ語知らないの知ってるよね?」


「・・・?」



どう考えても確信犯だろ。


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