第18話「精神的に向上心のある奴でも馬鹿は馬鹿」


暇だからどこかに行きたい。そんなマリアさんの要望に応えるため、俺たちは近所のショッピングモールに来ている。



「こんなところで良かったのか?」



正直な話、マリアの喜ぶ場所が良く分からないが、こんな近所のところで良かったのだろうか。


まぁ俺は構わないというか、近いから大歓迎なのだが・・・。



「カイン ポピュリエム」


「そうか。何言ってるのか全然わからん」


「・・・?」


「なぁマリア、最近ドイツ語多くないか?」



日本語ばっか使ってる俺も大概だけどな。



「Wrong!」(和訳:違う!)


「ほう?」


「But I don't apologize」(和訳:だが私は謝らない)


「あ?」



ということで、ショッピングモールの中を適当に歩き回ります。


エスコートとか俺には荷が重すぎるので、今回はマリアに全て投げつけ、俺はただついていくだけ。


どんな店に入るのかと身構えていると、それは意外な店だった。



「書店かよ」



まさかの書店だった。


マリアって、本に興味あったのか?



「What do you recommend?」(和訳:おすすめは?)


「えぇ・・・ワット カインド オブ・・・ジャンル ドゥー ユー ライク?」(What kind of genre do you like?/どんなジャンルがいいの?)


「Japanese novel」(和訳:日本の小説)


「えぇ・・・」



この短時間で二回も困惑してしまう。


というのも、俺は小説なんてそこまで読まないしなぁ。


それに、日本の書店に並ぶ本なんて、ほとんど日本の本だと思うのですが・・・。



とりあえず、高校の現代文でやった覚えのある小説を、マリアにおすすめすることにしました。


その名も・・・。



「こころ? memory?」(マリア)


「イエス。ディス イズ ザ“こころ”」(愛斗)



夏目漱石の“こころ”を、とりあえずおすすめしておきました。


まぁこの作品、結構暗めのストーリーだけど、無難と言えば無難だよね?



「Why is this recommend?」(和訳:なんでこれをおすすめしたの?)



そう言われてもなぁ・・・。



「名言がある。精神的に向上心のない者は馬鹿だ。そう、俺はこれが好き」


「ah~」



今ので理解したのか?


何がともあれ、俺が適当におすすめした“こころ”を、マリアは購入した。


というか、マリアさん本当に読むんですかね、こんな日本語ずっしりの書物を。


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