第9話 PHASE2 スレイブガール ミーツ スレイブアースリングボーイ ミーツ スレイブプリンセス

「げへへぇ」

 今度はドヴェルグルの青年で身長はキサラの胸ぐらいだ。

「ぐふっ!」

 身長差のため顔に手が届かないので自然と拳は腹に叩きこまれる。ドヴェルグルは膂力に優れた種族なので、威力は強烈で胃液が込み上げてきた。

 ふらついたが倒れるのは負けたということなので懸命に踏み止まった。

 少女の勝気さは男達の嗜虐心に火を着けてしまったらしく、次の奴隷はキサラより背の高いアールヴの男性だったが、爪先で鳩尾を狙ってきた

「くっ」

 胃が捻じれ内容物が噴き出しそうになる。

 それから奴隷達は執拗に鳩尾を責め、いくつもの拳と爪先が腹部へ放たれた。

 背を屈め必死に嘔吐を堪える少女の頭上に影が差す。

「…………っ?」

 見上げると二メートルを超える大男だ。

「限界みてえだな! そら、これでぶちまけちまえぇっ!」

 岩のような拳が鳩尾へ突き刺さり、肢体がくの字に歪み両足が一瞬宙に浮く。

 引き締まった腹筋で守られていた胃もその一撃で限界を超え、必死に繋ぎとめていた糸が切れる音が聞こえた。

「ごふっ! グッ、カハァ!」

 両手両膝を着いた少女の口から吐瀉物が勢いよく噴出し、身体の下に異臭を放つ水溜まりを作った。固形物は入っていなかったので吐き出されたのは胃液ばかりだ。

「くふっ、カハッ、……ハアッ、ハアッ、……ぐっ!」

 まだ息も整っていないのに後頭部を踏まれ、胃液塗れの大地と無理矢理キスをさせられた。

 窒息寸前に再び鳩尾を蹴られて仰向けにされ、二つの乳房が盛大に揺れた。

「ハアッ、ハアッ……。……?」

 少女を見下ろす奴隷達の表情にさきほどまでは違う物が宿っていた。

 ……性欲である。

 強靭な大胸筋に根元を支えられた張りの溢れる双乳は大きさを誇るようにそそり立ち、着衣と呼べるものはわずかに腰回りを覆うボロだけなので、ショーツを穿いていない剥き出しの股間が見える。血と泥と埃に塗れているものの汗でテカッた日焼けしたはだはエロテックで、すえた臭いが混じっていても立ち昇る牝の薫りは男を発情させるのに十分だった。

 奴隷達が視線を交わし無言の会話が成立する。

「くらえ!」

 仰向けの少女に拳が振り下ろされた。

「きゃう!」

 単なる苦悶とは明確に違う鼻にかかった叫びだった。キサラはたしかに苦痛だけでなく甘い痺れを感じていた。

 男が狙ったのは乳房だった。拳と乳肌ちちはだの間で鳶色の乳首がひしゃげている。

「!?」

 清純で健康的な少女は自分で性的遊戯をしたことはなく、性教育を受けられる環境でもなかったし、連日の重労働と人助けで体力的にそんなことに使う余力もなかった。他の奴隷の男女が休息時間に身体を絡め合っているのを見たことはあるものの、性的な刺激は人生ではじめての経験だった。

「…………? きゃっ!」

 未知の感覚に戸惑っているとさきほど以上の激感が襲った。別の奴隷の拳が股間に突き刺さっている。

 水に投げ込まれた石から波紋が生まれるように、拳から五体へ甘い痺れが伝わっていく。股間の奥が疼いて少女は無意識に大腿を擦り合わせた。爪先と両手の指も大地を掻く。

「なっ、なんのよ、これ……」

 三人目は人間の壮年の女性で、彼女はキサラのわずかに乳輪から浮いた先端を足の指で突き刺し、抉った。

「あたいだって若いころは……。スキンキアさえできれば!」

 若々しい裸体を嫉妬の目で睨みながら、執拗に抉り続ける。

 そのたびに未知の激感が走り少女は身を捩る喘ぐ。

「ふん! 清純なふりしてても一皮向けば雌犬じゃないか!」

 最後に一際大きく抉り女性が足を放した。

 すでに勃起しかけていた乳首は完全に起立していた。腿のすり合わせが激しくなり爪先もピンと張る。雌の香気も垢や脂、泥のすえた臭いを圧するほど強くなっていた。

 そのあとも奴隷達の攻撃は乳房や股間など性的刺激を与えられる箇所に集中した。

 魅力的な美少女を犯したいが、監督官に許されているのは殴打だけであり、性交に及んだらなにをされるかわからない。ゆえに彼らは少女に性的刺激を与えることで妥協したのだ。

 キサラが身を捩り喘ぎ艶めかしい声を上げる。

 少女の嬌態を見ているうちに極限の疲労も忘れるほど奴隷達は興奮した。そして性的に興奮すれば暴力への衝動、狂暴性が増すのも人族の摂理である。

 ……もしかしたら人族と蛮族は本質は同じなのかもしれない。

「カハッ!」

 鳩尾に踵がめり込む。久々に襲ってきた純粋な苦痛に少女は肺の空気をすべて吐き出してしまった。

 双乳と足の付け根だけに加えられていた殴打と蹴りはいつの間にか、それ以外の場所にも向けられていた。いやむしろそれ以外の箇所の方が多い。

「クソがぁ!」「監督官がぁ!」「死ねぇ!」

 もはや奴隷達は正気を失っており、彼らの目にはキサラが監督官に見えているようだ。

「グッ、クッ、カハァッ!」

 暴力に蹂躙され伸びやかな肢体が跳ね踊る。性的快感と純粋な苦痛が入り混じり神経は焼き切れそうだ。

「カハッ! ……!」 

 チカチカと点滅し半ば赤く染まった視界に、憤怒の表情のFFとティタニアが鶴嘴とスコップを構えて駆け寄ろうとしているのが映った。

 凄まじい暴力の嵐に晒されながらも必死に右の掌を二人に向け、「心配しないで! あたしはこのくらいじゃ死なない! いま暴れちゃだめだよ!」 という意思を伝えようとした。

 なんとか思いは伝わったようでFFとティタニアは立ち止まってくれた。二人は歯を食いしばっており、双眸と拳からは血が滴っていた。

 安堵しかすかに表情を緩めた少女の顔に異臭を放つ生暖かい液体が降り注ぐ。

 一人の奴隷が小水を浴びせたのだ。それが合図だったかのように他の奴隷も次々と小水を放つ。

 人族といえどそんなものである。

 優しくしたって、優しくしてもらえるわけではない。

 助けても、助けてもらえない。

 人族も汚くて、卑劣で、破廉恥で、醜い。

 蛮族がいまの彼らを見たら嘲笑、いや失笑するだろう。

 

 一時間以上が経過しようやくすべての奴隷が殴打を終えた。

 暴力からは解放されたもののキサラの姿は見るも無残なものになっていた。顔は本来の美しさの痕跡さえなくなるほど腫れ上がり、血と鼻水と涎に塗れている。膚には無数の痣と擦過傷が刻まれ、泥と土と埃で全体の半分以上が覆われており、わずかに腰回りを隠していたボロも千切れ飛んでいる。その上身体中小便と吐瀉物で汚れ強い腐敗集を放っていた。

「ハァッ……、ハァッ……、ハァッ……。……っ」

 血と吐瀉物に塗れた唇から漏れる吐息はか細く、いまにも途切れそうで、身体もびくんびくんと痙攣を繰り返している。

「くせーっ、くせーっ、ひでぇ臭いだ!」

「まるで生ゴミだな。ゴミはゴミ箱へ捨てなきゃな!」

 巨漢に担ぎ上げられ近くにあったゴミバケツへ頭から叩きこまれた。

 上半身がすっぽりと埋まり、剥き出しの下半身がバケツからはみ出た無残で滑稽な姿である。

 最後に少女は彼女を呼ぶFFとティタニアの声を聞いた。

 本人も忘れてたがキサラの十六歳の誕生日まであと数時間だった。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る