最初のお話 お話されてます。
寺田さんは本題の何故エンジニアを会社に入れたくないかを話し始めた。
「別にエンジニアを弊社に入れたくない訳ではないんだよ?実際にエンジニアを募集しているしね」
「え?」
翔太郎くんは思っていた答えと違っていたことに困惑してついつい声が出た。
「いやー、端的に言うとネット上にある都合の良い情報に染まったエンジニアは要らないんだよ。」
「どういう事ですか?
「それは君が君に都合の良い情報しか見てないからだよ。僕だって本当に良い子がいるなら未経験でも文系でも関係なく採りたいし、売上がそれだけ出せるなら年収1,000万も提示して良いと思っているよ。でも問題なのは都合の良い情報に乗せられて来た人が現実に向き合えるかということだよ。」
「現実に向き合うですか……」
「そう、現実に向き合う。」
「例えばどういう…?」
「そうだねー、例えば君は窓もないような部屋に数十人と押し込められてパイプ椅子に座りながら一日最低8時間の作業を出来るかい?」
「……聞いてるだけでもきついと思います。」
翔太郎くんは本当にそんな辛い環境があるのかと顔を強張らせている。
「しかもこれで年収は300万に届かない、200万円台よ。そういう仕事もあるのよ。みんなが夢見ている、ネット上に流れている情報の多くはサッカーや野球のトッププレイヤーのようなピラミッドの頂点で、より多くが存在するはずの中層以下の情報は君は見た?」
「いえ、見てないです。そんなの出てこなかったですね。」
「Whisperやってて現実知ってるエンジニアならまずそんな甘い事を言わないのよな。あと問題は検索の仕方。翔太郎くんって普通に検索したでしょ?」
「え?検索って検索ですよね?」
翔太郎くんは検索に複数の方法があるのかと不思議な顔をしている。
「最初に検索した画面だと、いいねやシェアが多くされているウィスプしか出てこないのよ?例えば…」
そう言って寺田さんは胸ポケットからおもむろにスマホを取り出してウィスプを起動した。
翔太郎くんからちらっと見えたウィスプの画面は確かに
「まずは普通にエンジニアと未経験で検索をしてみよう。」
そうやって検索画面を見せられたが翔太郎くんが昨日見たウィスプがいっぱい出てきた。寺田さんは翔太郎くんに画面を見せながら検索結果の画面をスクロールしてみせた。
「新しいのもありますが僕が見たウィスプですね。」
「エンジニアは未経験でもなれるって内容ばかりでしょ?」
「そうですね」
「で、これを…こうする、と…」
寺田さんはそう言って最新のウィスプを表示するボタンを押した。
するとどうだろう。今までの内容と全く違う内容がいっぱい出てきた。
未経験からエンジニアになったけど辛い。面談何回も受けたけど落ちてばかり。未経験エンジニア使えない。経験年数2年のエンジニアって書いてあったのにこいつぜってー未経験やろ?
今まで出てきたウィスプに混じって全然違う内容が出てきた。
「いいねやシェアされてない現実がこれだよ。みんな夢が見れるウィスプを見てるんだよ。みんな自分に都合が良い情報を求めている。求めた結果他人にも誤った情報が拡散される。」
翔太郎くんは胸が締め付けられた。高校生にもなって現実を全く見れてない事に。自分が現実逃避をしていたんだと考え始めた。現実を見ないで質問をしに来た事にも恥ずかしさを覚えて翔太郎くんは寺田さんから目線を外して白い机を見つめ始めた。
「まぁー君は高校生だし、これで現実を知ってくれたんだと思う。」
そう言って机の対面から身を乗り出して寺田さんは翔太郎くんの肩を優しく叩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます