奇館

暫く細い曲がり道をくねって行った先に、まるで元々はどこかの屋敷に続くみたいな

道の先に、似つかわしくない大きな館が見えた

そんなに大きい見た目じゃなさそうなんだけど・・。


門の眼前まで差し迫った時に、急に冷や汗がこめかみを翳め落ちて、地面に落ちた

ふいに、背中をゾクリとした悪寒が走る


大丈夫なのかな・・・ここ


今更になって、自分は引き返せない恐怖に飲まれそうになってきた

でも・・行くしか無いか・・どうせ記憶がない自分には居場所なんてない


門の近くの両脇に、草花に囲まれた二つの道がある

枯れた草木と対照的に、もう一方には、バラや彼岸花が生えていた

誰かが手入れしてるのか?でも、近くにも家の窓を見上げてみても、静謐さだけしか

感じられないから、まるで人がいない様に見える


両脇の道をついで、見やるが、何故か頭が急激に痛んだ


「いっ痛っ!?」


激しく眼下が軋んだ様に痛んだ 

ついで、猛烈な吐き気に襲われる

その場に倒れそうになりながらも、門前の前の手摺りの柵にしがみつく


(な、なんだったんだ今の・・急に)

「帰った方がいいのだろうか」


途方もない気持ちを察したかの様に、急に雨が降る


「つ、冷たっ」

まるで冷水の様に冷えた雨が、急に振り付ける

仕方ない、・・俺は溜め息をついた

開きもしない頑丈そうな漆黒の扉をじっと見つめた後、観念して扉を叩いた


ゴンゴン

ゴンゴン


まるで悪魔の鐘の音というのだろうか・・

鳴らしてから気付くが、ドアノッカーは、蔦に絡まる悪魔の姿だった


大きな鉄の音を響かせてからも、急に心臓の鼓動が早鐘を打ち、不安に襲われた

館の主人になんて言おう・・雨宿りさせて・・というしかないか

取って食われなきゃいいけども・・


・・・・・・・

・・・・・・・


暫く待ったが、誰も出てくる気配も、気付いて近づいてくる音も無い

本当に聞こえているのだろうか?


それに、そもそもこんなへんぴな場所にある館自体かなりおかしいはず・・

元来た道を振り返ろうかと思案した時、どこかでチリンと音が聞こえた


そうしてそのすぐ後に、扉から

カチャ と音が響いた 


少し戸惑ったが意を決して、重たい扉から館内に入ってみた

重く不気味な音を出しながら、扉はゆっくりと開いた


一瞬躊躇った後、一歩を踏み出し、するりと扉をすり抜けて館内に足を踏み入れた


館内はひどく静寂が支配していた

まるで荘厳な屋敷とでもいうのだろうか 


微かにブルーライトに照らされてるかの様で入ってまず眼前に飛び込むのは

大きなホールから上に繋がる階段が両脇から伸びておりちょうど

部屋が幾つか見える



その上がってすぐの広い空間に、テラスにあるようなテーブルや椅子に

埃を被ってそうなビリヤード台に壁には外国製の高そうなダーツがかけられている


他にも綺麗な姿見や奥には美術品の絵画も壁に立てかけられていて

廃屋そうなのに、偉く威厳と異彩を今も尚、放っていた


まるで美術館(ミュージアム)みたいで幻想的なのだが、人がいないのか

灰かぶりが見れる


「す、すいませーん、誰かいませんかぁ」

「雨宿り・・したいのですが・・」コミュ障な自分の弱々しい声が空しく闇に消えた



誰も出てはこないし、自分以外、なんの音も聞こえない

(人・・住んでんのかな?)

近くにはかつて貴重だったと思わせるような革製のソファ

仕方ないので手で埃を払い、ちょこんと座らせてもらう


・・・ん?なんだろう

凄く座り込んだだけで、普通のソファの感触と違う事がわかった

なんだかお尻周りが優しく包まれた様な柔らかい感触


何故だか座った瞬間、ビビッと頭に電流が流れたみたく気持ちよかった

なんなのだろう・・自分が貧乏人だからなのだろうか?

なんだか不思議な座り心地だった


なんだか恥ずかしいやら申し訳ないやらな気持ちになったので

即座に腰を浮かす

今度は深呼吸をしてから、大きな声で呼びかけた


「すいませーーーん、誰かいませんか?」

・・・が、何度も試すがやはり何も反応は返らない


仕方ないので、一旦外に出ようかと扉に向かった時・・・

あれ?今度は開かない

嘘だ、なんで開かない?さっき入ってきたばかりだというのに

押しても引いても、まるで外側から押さえつけられたかの様に開かなかった


「こ、壊した・・のかな?どうしよう」



急に今立っている暗闇に、恐怖感が湧いて心細くなる すると・・・。

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