第5話 隠された告白

そうして俺はチョコの食い過ぎで、自販機へ向かい、お茶を流し込んで一息つく

そして、さっきリリから貰ったチョコを開けようとした時、曲がり角の隅で

聞き慣れた声がした。


「おまえ、朝はなんのつもりだよ。おっかねぇーな。何企んでやがる」


「あ、アタシは別に何も・・ただ、修司さんの事が・・」


「あのさ、番長だかなんだか知らんけど、迷惑だからそーゆーの。んじゃね」


「あっ待ってよ・・まだ返事」


「返事?んなのある訳ねーし・・しかも俺、好きな奴がいるから無理。って事でバイバイ」


・・・やべぇ。気まずいとこ遭遇した。

言い争ってたのは、朝の二人・・そう、兄の修司と、不良少女だ


兄貴は俺に気付かぬまま先へ行ってた


だが、残された少女は、可愛らしい嗚咽をあげながら、悲痛そうにその場に崩れて

肩を震わせて泣いていた


声をかけるべきなんかなぁ・・迷いながら俺は


「あの、ごめんね。変なとこ居合わせちゃって・・見るつもりなかったけど・・

うちの兄貴がやらかしたようでほんとごめん」


少女は虚ろにこっちを見た

怒られるかと思いきや

・・ポロポロ


うぉ!?なんだこの破壊力は!

見た目不良そうで活発クール系女子が、可愛らしく、目に涙を湛えてやがる

や、やめて。その泣き顔は反則じゃんか!?


・・まだ肩を震わせる少女

「ひっく・・・ごめんなさい。へんなとこ見せちゃって・・」

やけに素直な態度で

俺はコンボ技を喰らった様にKO状態だ


「お願い・・泣き顔なんて見ないで・・誰にも言わないで。」



「い、いや、絶対言わないし、俺何も見てないし忘れるからさ、あの、元気出して」



「どうしてアナタが謝るの?別に、アナタが悪い訳じゃない・・」



「いや、仮にも弟だし、・・あのさ、可愛いんだからこんなんでめげちゃ駄目だよ」


「キミは悪くないし、悪いのはうちのバカ兄だからさ・・なんかあいつ小さい頃から

女嫌いなんだよね・・その割にまぁ、遊び人なんだけどさ」



「アナタは・・?」



「俺は弟の優・・キミは?まぁ、モテない俺なんかに慰められてもあれだけどさ。

バカな兄なんて忘れて、楽しい事考えよ?前向きにさ?・・・」


ーシーンー

その場に美少女の嗚咽だけが支配していて、これじゃ俺が泣かせたみたいで、もぅ帰りたい


暫く傍にいたら、急にその少女は立ち上がってこう言った


「ありがとね・・私の名前は、あ、杏奈(あんな)へんなとこ見せてごめん」


「元気になってくれればそれでいいよ。はい、ハンカチ。こっちこそ不肖の兄がごめん」



「あなた・・弟君で・・ほんとにモテないの・・?顔だって・・」



「ん?全然、性格が陰キャだからかね。全然モテた事ないよー」


「そうなんだぁ・・」


(な、なんでいきなり沈黙したの?)



「あの・・ね。その、わた、私の事、何か知ってる?」


「あ~ぁ、えっと、なんか下らない噂位・・かなぁ?」



「・・わた、私が、他人の物欲しがって番長潰してた・・とかでしょ?」

「うぅ、、ち、違うのに・・私、ただ自分の好きな事をしてるだけで、そんな事してない」



「で、でも、格好が・・学生らしく」


「わ、私はただ、学校に馴染めないのと、陰キャのくせに、ピアスとかDJとかクラブとか

そういうの好きで、だから好きな服装してるだけ・・」



「え?違うの?でも、クラブ好きなら陽キャでしょ?」



「ち、違うよぉ。それも、友達から勧められて好きになっただけで、実際は一人で

行動できないもん」



「てっきり皆で噂してるから・・」



「し、知らないよぉ。多分それ、私の友達だよぉ・見かけ可愛いけど、怒ったら怖くて

昔、事件なった時あって、私、一緒にいたから誤解されたんだよぉ」



「くっ・・男にそのあざとさはきつい・・可愛すぎる・・クールにみえてぶりっこ」



「・・ち、違う・・もん。だから嫌なんだよ。話し方だけで虐められるから」



「そうだったんだね・・あぁ、じゃぁどう、俺と友達なってよ。可愛い子なら大歓迎だし

その、よかったら今度どこか行こう?元気出るだろしさ」


「え・・?私、と?でも、修司さんが」


「ん~兄貴好きなのはわかったからさ、いいじゃん当てつけみたくしたらさ

振った事後悔させてやろうよ?」


「私なんかで・・いいの?・・なんか迷惑かけてたり、同情なら・・」


「いいんだよそんなの!俺、杏奈ちゃんの事好きだしさ。これからよろしく。なんか変な自己紹介に

お互いなっちゃったろうけどさ。予定教えてくれたら、今度遊び行かない?」


ダメ元で言ってみるものだ。

杏奈ちゃんはとびきりの笑顔でうん!と応えてくれた


そうして俺は遂に彼女が出来たと大喜びで、

「これって、デート・・でいいのかな?」なんて杏奈に呟く

すると

「・・え?私は嬉しいよ。優君。これからよ、よろしくね」

そういって腕を絡めてくれた時だった


ガタン

ボトボト

何かを落とした音がする

しかも、一つじゃない?



うっ!


見るとそこに立っていたのは、リリと、兄の修司だ

うわぁ最悪だ


「優・・くん?・・なんで杏奈と仲良くしてるの?」

え?リリが切り出した言葉に絶句する

二人が友達?


「優・・おまえ、そいつなんかと腕組んでどうしたってんだよ。おまえらしくねぇぞ」

そういって兄貴までが何故か呆然としている

が、つかつか歩み寄り


「おい!おまえさっきの不良だよなぁ!うちの弟に何かどわかしてくれてんだコラァ」


そういって胸ぐらを掴もうとしたので慌てて止めに入る



「やめろよ!彼女に手を出すな!元はといえば兄貴がひどいことしたからだろ」



「な、何言ってるんだ優・・違うだろ。騙されるなよ。そいつは不良で・・」



「違うよ!それはデタラメな噂で、なんか連れが居てそいつが噂の根源だったらしいだけで

彼女じゃない」



「優君、駄目ですよぅ、その根源でいて、しかもいつも私を見下してた相手は

そこにいる立花ちゃんなんですよぅ?」


「え・・?」


その時だった。まるで無機質な声が響き渡ったせいで俺の背筋が震えたのは




「・・・優君」




「・・・さっき私に言ってくれてた事・・嘘だったの?」





「え?」




「チョコ・・嬉しいって言ってくれたのに・・どうして杏奈と腕組んでるの・・?」



小さい声だったのに、まるで幽霊に威嚇されてるかの雰囲気だった

あの兄貴ですら、あちゃーと顔に手を当てて首を振っていた



「ごめんねぇ立花ちゃん。この人が噂の優くんなんだね。悪いけど今日から私達、彼カノ

になっちゃったー」



え?え?え?俺は唐突な事態にパニクってついていけてない

むしろ何故内気だったはずの杏奈がこんなにイケイケ牽制しているのだろう?



「優君、怖がらなくて良いからね。私の事好きって言ってくれたから。だから私が護るよ」


「・・!?」

その言葉に場の全員が固まる



「私なんかを本当に必要としてくれて嬉しかったぁ・・恋人ができるだけでこんなにも

強くなりたいって思えるから・・。だからごめんね立花ちゃん。」



「・・・嘘だよね?優君・・」


立花を泣かせてしまった


「いや・・」

そう言おうとしたとき



「考え直せ優!兄貴命令だ。おまえに恋愛なんてまだ早い!それくらいならまだリリの

方がマシだろ!考え直せ!ほら、家に帰んぞ!」



そういって兄貴に無理矢理引きずられる

抵抗したけど


「今はこうしとけ。な?おまえは兄ちゃんが守ってやる。今のこの空気読めよ。

一度家に行って、距離取って落ち着いてからの方がいい!」


「悪いなリリ・・こいつ連れてくぜ」

そういって強引に俺を自宅に連れ戻す兄



どうなってんだ?学校も中途半端で・・こんな状況になって

頭がパニクりながらもどうすべきかわからないまま俺は帰路に着く


りりは俯きながら、その場でじっと佇んでいた

なんだか泣いていた様に見える


杏奈はというと、何故か笑顔で見守っていた

俺はもぅ訳がわからなくてただ少し、皆が怖かった

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