第4話 落としたのは恋ですか?

ハァ・・ハァ・・やってられねぇ・・俺は禁断のヤク(チョコ)に今手を出してる


フへへ、通行人が何故か優しい顔で俺を見てくれるぜ

こうでもしなきゃモテない俺たちは正気を保っていられねぇのさ


ぐへへへ・・


俺はあろうことか、モテない悲しみのL5を発症し、最早手遅れだった

こうして今、兄貴のチョコを、授業をサボって校舎裏で検分し、賞味しているとこだ



誰も俺に義理チョコすらくれない悲しいご時世

今なんて友チョコだの同性チョコだの流行ってるのに、一個もない悲しさが神にわかるか!


うぅっと泣きながら預かっていた兄貴へのチョコの山を漁っていた時だった



「コラァ!優ちゃん何サボってんの!・・ってわぁ!顔が泥だらけ!」



「うひゃぁ!って何だリリか・・失敬な。断じてチョコは渡さぬぞ」



「あ・・そ、それでそんな顔を泥・・じゃなかったチョコだらけにしてたんだね・・

あはは、どう突っ込んで欲しいのかわからないや」



「ほ、ほっといてくれ」



「い、いや、っていうかそもそも、顔に塗りつける物じゃなくて食べるものでしょ?

勝手にお兄さんの食べちゃ怒られちゃうでしょ?」



「え。あ、い、いやどうせ兄貴はなんか知らんけど、女に飽きてるし興味ないからいらねー

って俺にいって、学校終わるまでに処分してくれってさ」



「え!そんなひどい・・女の子達、せっかくあげたのに」



「いや、なんか、どれも買ってきたもんならその程度の気持ちだろってさ。

それに手作りは重いから嫌らしいし、俺も贅沢だなって思ったけど、きっと兄貴」



「放課後とか、又は、気分直しにデートしたりとかしてやりゃ別に喰わなくたって

平気。女はギャップある行動に弱いからだとさ。」



「ぐぬぬ・・修君ゲスぃな・・ただ、女の子を揺らすテクニックだけは心得てやがる」

「で?・・優は何してんの?それならそんだけのチョコ捨てるなり誰かにあげたら

いいじゃない?」



「いや、・・なんかさ、勿体ないかな~・・なんてさ。せっかくこうして一人一人

イベントだからって準備してきたのに、捨てられるってのもさ。それくらいなら兄貴が

食ったって事にしておくのどうかなって」



「アホくさ~ぁ。・・ハァ、優は女性に夢見過ぎだよぉ。いぃ?世の中の女性は強いんだよ」

「病めば病む程強くなる!。。それが恋する女なんだよ。捨てられたって本気でも軽い気持ちでもめげないし、むしろ、余計に追っかけたくなるもんなんだよ」



「そ、そうなんか?それは初めて聞いたわ・・。女子って強い?ってか怖ぇーのな」

「でも、それならやっぱり、兄貴が捨てた以上俺のもんだろこれ。なら全部俺が処理で食ったって

いいじゃん。彼女達の気持ち、勿体ないしさ」



「優・・・あ、アンタに食われたくて作ったり買った訳じゃないかもじゃん」



「それでも、兄貴が食わないなら俺が食うさ・・」



「もぅ、・・ほんっっと、呆れるほどお人好しなんだから。おまけに乙女心に鈍感だし

だから、もてないんだよ・・・まぁ、そこが優の良いとこだけどさ」


「・・・でも、やっぱりその量はお腹壊すし、あたしの知り合いに義理チョコ代わりに

上手く配って、全部処理してあげるからさ・・その・・あの・・」



「・・ん?助かる・・ってかそういえばおまえのチョコは?兄貴にもう渡したんだろ?」



「えっぁぁぁえっとあぁ、うん・・」



「なら、それは俺からちゃんと兄貴に食えって渡しとくよ。その方がいいだろ?」



「・・・え・・?」



「・・あ、うん。そう、だね。あはは。でもさ、やっぱり恥ずかしいから」



「ん?」



そういって急にしおらしくなったと思えば急に袋の中を漁ってその中の一つを奪い取る

そんでがさごそ・・と何かした後、その箱をぶっきらぼうに俺に差し出した



「はいこれ!」



「え?」



「モテないキミに、義理チョコって事でなら、渡してあげる」



「も、モテないは余計じゃ・・」



「いいの!だ、大体、修司君にあげる奴だったのなんだから貰えるだけいいでしょ」



「そ、それとも、・・その、人にあげるはずだったやつなんだろうし、私からのがいらな・・」



「いる!」


間髪入れずにそうリリに告げた

こいつの涙は見たくなかったから



「リリのなら、きっと手作り上手いだろうし、欲しいから俺がもらう!あんがとな!リリ」


そういって包装紙を解き始める・・が



「いや・・その、ごめん。それ、買った奴」



「な。なぬぅ・・ガーン・・本命にあげるのに手作りじゃないんかい」



「い、いい今風の女子は、手作りだと色々問題なってもあれだから、意外と買ってきたやつ

で済ますんだよぉ!知らないの?」



「し、知るかボケ。本命貰った事すら無い俺にわかるか馬鹿」



「あー二回も罵ったなぁ。酷い。ならもうそのチョコやんない!返せよバカァ」



「ふーんだ。甘いもの食い過ぎて喉渇いたから、自販機行ってくらぁ。またなー」



「・・・・もぅ・・ほんと・・バカ」

そうして、リリはぎゅっと後ろ手に力を込めて、優を見送るのだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る