03 激情のお茶会(パーティ)

ズガァァァァァン


そんな陳腐だが、恐ろしい程の破壊音が館中に響いた

吹っ飛んだドアが、醜悪なデーモンごと吹き飛ばす

それに紛れて上空から煙に紛れて電光石火の様に悪魔達が蒼の鎧を纏う騎士に飛びかかる




「・・笑止」



そういって稲光を纏って鮮やかな旋回のもと、まるで裂かれた風が渦を描く様に

騎士の全身を包んだ




刹那



恐ろしい稲光が、即座に劈き、敵を吹き飛ばした

その瞬間、雷を直で受け止めた鬼は、絶叫をあげながらも、ジュッと耳障りな音を立てて灰となる




「こんなもの・・?異形の者といえど、これなら地上にいた頃の人間の方が手強かったわ」




「いい加減、出てきなさい!無駄な犠牲も好みません。私の声は聞こえてるんでしょ?」




「答えなさい!リレーゼ!私は貴女を討つ為に此処へ来たのだから!」




広い館に、凜とした声が広がっていく

が、特に何の反応も無い

騎士は、ゆっくりとある扉の前に立つ



「永い月日を違えて相まみえる来客に失礼ではなくて・・」


そういって剣を構える



蒼の炎が剣先に瞬間光る そして瞬く間に扉は塵の残骸へと変わる

すると





「ふふ・・よくいったものね。私の友人にここまで無礼な者はいなくてよ?」




塵に紛れて誰かが一言告げて、その瞬間、黒い閃光が騎士に放たれた




「可哀想なお客様・・・何か勘違いしているようね?どうか元居た魂の安らぎへお帰りに

なって・・ここは、貴女に相応しくない場所なのだから・・そう。永遠にね!!」




「クッ・・・・ガァッ・・・ハァッ!」

間一髪騎士は、持っていた盾で防ぎきる




が、その瞬間を見逃さない影が頭上から大鎌を振り下ろすかの様に攻撃してきた


「アハハハハァッ。魂も~らい。いっただっきまぁ~~すぅ♪」


ーブォンー


異様な音が響く


見れば赤い角の悪魔が見えた



受けたらやばいと騎士は瞬間さとったが、それを瞬時に諦め、盾に力を集め、

悪魔に逆に仕掛けた 鬼はまさかの反撃に、体勢を大きく崩し吹き飛んだ



吹き飛んだ先は、どうやらそこは食堂なのか、お嬢様が囲む様な、長いテーブルに派手に激突した

そして暫くの静寂が間を支配する

爆風が収まりかけたそのとき、ようやく騎士は、標的を眼前に捕らえた



「ふふ・・・無粋なお客の割に、なかなかやりますこと・・」

現れたのは、小柄で気品ある令嬢・・が、その美貌は悪魔のような出で立ちだった




「私の顔を・・覚えているか・・」

騎士は呟く どこかしら身体は震え、わなないていた




「さぁ?どなたでしたかしら?変ねぇ?私、記憶力は

良い方なのだけれど」



「あぁ、思い出したくない事は、忘れる主義でしたわ・・ふふふ」



そういって、場に似つかわしくないような、気品ある極上の笑みで、あざとく眼前の令嬢は

笑ってみせた


「どちらにせよ、顔も見せない無礼者に、友人だの言われる筋合いも無し・・

それに、私に対して・・・」



「無礼ですわよ!!」

そういった瞬間、令嬢の全身から、ゴーレムの様な影飛び出す

恐ろしい程までの威圧を醸し出したかと思うと、湧き上がるその黒い魔力を騎士へぶつけてきた




「くっ・・」


「なかなかやるな・・・その力・・やはり魔女だったか・・私同様、死後に契約した力?」





「・・・黙れ。私を魔女と呼ぶな・・。

あなたこそ、あの時のままで、ほんと、ぶりっこが過ぎるわね。

あの時のまま、穢れも知らず、純粋で、あざとい、狂った正義を振りかざす偽善者ね」


「さすが、狂った正義(騎士)と呼ばれるだけあって、がさつね」



「ふん・・酔狂な悪魔を飼ってる貴女に言われたくないわね。リレイズ。正義はいつだって

孤独なのよ・・もぅ私は吹っ切れた。正義に殉じた事も、今は後悔してないわ」


「それもこれも、あなたを見つけ出すため」


「ふぅ・・・ほんと、頭でっかちで、面白くないわね。貴女・・ちっとも変わらない

お・ば・か・さ・ん♡」


「正直者はバカをみるだけ。黙って私の贄でいればよかったのに、私に刃向かうだなんて」


「それに貴女、やっぱりどこで得てきた洗礼か知らないけど、その力にだってきっと

神の血を流させたんでしょ?それでここまで追いかけてきて、復讐なんて・・」



「正義が聴いてあきれるわ・・」



ージャキィィィィンー



そこで初めて、お互いが剣で交う




「黙れ!おまえは裏切り者だ!国を支配し、民を脅かし、あまつさえ、あの人を奪った」




「ふふ・・まっ、いちいち否定はしないわ。馬の耳に念仏・・おバカさんに効く薬なんて

ないもの」




「それに、実際私が手を下した訳じゃ無い・・貴女が死んだ理由は・・」





「黙れぇ悪魔が!?」




ーガキィィィィンー 


痛いくらいの重く鈍い剣戟が繰り返される




「今度は逆上?これだからお子様は・・」

ひょいひょいっと後ろへ優雅令嬢は距離を取った


「いぃ?正義なんて誇示するものじゃない。正義なんて、自分を守るものなだけで、

何も助けてなんてくれないのよ?」



「あなたは、その正義で・・私を殺しに来た・・そんなの、ただの私怨というもので

あって、正義なんかじゃない・・さしずめ今の貴女は・・」




「そう・・復讐の騎士かしらね」





「だから・・どうした。おまえは、全ての生きる意味を奪った・・私は、騎士の汚名を

着ようとも、せめてもの責務を果たすだけだ!・・くらえ!」




「我が誇り高き魂に応えよ・・我が魂、肉体、誇りを、今こそ栄光の盾にその力を

与えたまえ・・幾千の白夜の光・・時の息吹よ。悪を禍つ浄雷の光」






「ヨルムンガンド!!(大いなる精霊の命よ!)





そういって白夜の光を纏った様な騎士は全身から雷を放出させながら

険しい眼光でリレイズを見据えた


対してリレイズは危険を察知して奥へ奥へと逃げ、それを騎士は追う

追撃の最中、次々周りの部屋は壊れていく


「ここで終りね・・さらば我が主・・これでようやく、私も救われる」


「しまった・・あっ・・まって・・」リレイズは何故か怯えた


「命乞いなど無駄よ・・覚悟!!」


そういって光を纏った騎士は悪の令嬢に突撃した


その瞬間、どこかで笑う影が見えた

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