第7話 点滴の残りかす
『
原因は不明。発症すると、腹痛、下痢、血便、発熱、など様々な症状が現れる。それもいつ起こるか分からない。
念には念を入れて通学路のトイレの位置を覚えて、トイレの借りられるコンビニも覚えた。だけど、学校では一時間トイレから出られないこともあった。
〇花ちゃんとの距離が遠くなった気がする。僕はいじめられたわけではない。だけれど、誰も僕に話しかけてはいけないんじゃないだろうか? という目に見えない壁ができた。
気を使わせているし、気を使われるのは好きじゃない。暗黙のルールだった。
晴れ渡る空。山の端に雪が残る山脈。それを映し込む湖。湖面は空と同じ透きとおる瑠璃色なのに、湖面の方が淀んで見えるのは何故だろうか。
あそこに〇花ちゃんがいれば。僕は覗き込まれる湖面の側だろう。いや、〇花ちゃんは僕には気づきもしないで山の小道に沿って歩んでいくのだろう。僕には気づきもしない。
風量 小
気候 春の高原
時間 正午
点滴の残りかす。僕の血が点滴の管を逆流していく。僕の意識が〇花ちゃんのところへ舞い戻っていくみたいに。
看護師さんは現れない。〇花ちゃんは、今頃学校の帰り道。もう家についたころかな。塾に行く準備をしているかな。〇花ちゃんは塾に行く前に必ずメールをくれた。
「優利くん、行ってくるね。明日は習いごと、何もないから。いっしょにカラオケでも行こ?」
塾がはじまるのは、三十分後。今日もスマホにメールは来ていないだろう。
点滴が終わったら来ていないことを確認しよう♪
窓のチャンネルをシャットダウンして無雑作にリモコンを放る。
「美花ちゃんに会いたいな」
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