第16話 とんだお邪魔虫と天然天使的古たぬき
そして朝の時間
ぽぽっ・・と
昨夜の夜の出来事を
思い出しながら、赤くなるティエ・・・
裸の身体にシーツを巻きつける
「ティエ 朝の光の中のティエも とても綺麗だ」
頬杖をつき、身体をシーツの中に埋もれて
ヴァルジニテ王女は嬉しそうに笑って言う
王女の胸元はまだ成長過程だが
丸みを帯びて愛らしい形
シーツから胸の谷間が見える
王女もまた、シーツを身体に巻き
ティエにくちづけする
するとお邪魔虫的なリュース公ことワイアットが
ノックを忘れて
ヴァルジテ王女の部屋に飛び込んで来た!
「大変です王女!!ティエ姉様が行方不明です!!」
「何処にも・・・あ、あぁ!」
「な、な、な、何をしてるんですかあぁ!!」
「ヴァルジニテ王女!!ティエ姉様にとんでもない事をぉお!!」
「朝早くからうるさいぞ下僕なワイアット 」
「大体、レディの・・
一国の王女の部屋にノックもせずに飛び込んできて、無礼にも程がある
なあティエ」
見せつけるようにキスをする王女
「ひ・・・ティエええ姉様ああ!」
赤くなり黙ったまま
顔をシーツに隠してしまうティエ
「まあ、そういう事だ 何か文句あるかな?」
「ヴァルジニテ王女よちゃんと責任は取らねばならんぞ
ティエ姫を幸せにしなさい」
「それから、そなたは跡継ぎだから
夫を持たねばな」
微笑みながら父親の風の王の一言
「父上・・・」
赤くなる王女ヴァルジニテ
しかも風の王ヴァルーダの後ろに
側近のゲルドアスが真っ青になり立っていた
「夫はどちらにするのかな?もう決めたのだろう
両方か ふむ夫が二人なら、心強いし 家族も増えて楽しいだろう」
いつの間にか風の王ヴァルーダの瞳は黄金色に変わっている
「あの・・父上」
顔を赤くしてモゴモゴする王女ヴァルジニテ
「ちょっと悪いが部屋に入るぞ王女よ」
部屋に入り、王女の頭を撫で撫でして
いい子、いい子する風の王
天使の微笑の父王、風の王ヴァルーダ
「そなたが多くの者達を好きになり愛するのは
恐らく神達がそなたに沢山、子供を産むように命じたのであろう
私は一人しか子供が作れなったから・・すまない」
「私はそなたが好きになり
愛した者達を全て家族として受け入れる
いずれ、二人だけだった家族の食卓は賑やかになるであろうな
・・・とても楽しみだ。ふふ」
「ん・・すまぬな つい心が視えたが
ルアはかなり変わった趣味だな 鞭打たれるのを好むとは」
それを聞き慌てて ゲルドアスは叫ぶように言う
「なりません!!その様な趣味など
夫の黒の王には相応しく有りません!!!!」
「構わないではないかゲルドアス 人の趣味、趣向は人それぞれだ
犯罪紛いの趣味の場合は困るがな それで幸せなら、構わないと思うぞ」
「彼もまた優秀で性格の良い 美しい若者だ」
「済まぬが一つだけ
お願いがあるのだが 良いかな王女よ」
「は、はい父上!」
「夫は三人までにお願いしたい
重婚は黒の国では可能だが形だけの黒の王とはいえ
あまり多いと廻りが混乱する
だから、早い者勝ちだな
後の者は側室の形か恋人に留めて欲しい」
「わかりました父上!
ティエ姫も幸せにします!神達に誓います」
「うむ 良い子じや 私の可愛いヴァルジニテ王女よ」
再び頭を優しく撫で撫でする
絶句しているワイアットとゲルドアス
「おお、そうじや
レディの部屋にあまり長居をしてはいけないな
それに恋人達の邪魔をするのも野暮というものだ
ではな王女、ティエ姫」
「これからはティエ姫は
王女の側室として認め、家族の一人
この様な老いぼれの父だが、宜しく頼むぞ」
「は、はい!!」
ティエは真っ赤になって答えた
バタリとドアが閉まる
「あの 黒の王様」
泣きそうな顔でワイアットが言う
「諦めなさいワイアット
ティエ姫は子供が出来ない身体だ
それに愛し合う二人を引き裂くなど 悲しい恋をした私には出来ない」
「それにだ」
「はい・・?」
「三代目リュース公ワイアットよ
そなたはヴァルジニエ王女の下僕で有ろうが
素直に諦めなさい」
「はい!!い・・な、何故それを」
震える声でワイアットは聞く
「六歳の王女ヴァルジニテに散々叩きのめされ
王女にこれから、下僕だと言われたであろうが
まあ、そなた以外にも
大半の黒の貴族の息子達は王女の下僕だが・・」
しみじみと言う風の王
そしてワイアットの方を振り返り
イタズラっ子の表情で
黄金色の瞳で にぱっと齒を見せて笑う風の王ヴァルーダ
「ひ、ひどいですぅ!!
全部、最初から知ってましたね!!あんまりです!!」
「私は一人娘が可愛くて仕方い 申し訳ないな若き三代目リュース公
そなたらはいずれヴァルジニエ王女の家臣
頑張ってくれ・・ははっ」
「そして・・・生涯、ヴァルジニテ王女が死ぬまで下僕の運命だな
まあ王女は狂王にはならないから安心しなさい
但し、死ぬ程こき使われるだろうな~くすくすっ」
「ひ・・ひどいですぅ!!この扱いはなんなんですかあ」
「泣き顔が父親のリュース公に良く似ておるな・・ふふ」
「二十歳をかなり過ぎた健康な男に 優しくする義務はない!!」!
「はははっ まあ、頑張ってくれ ははっ!」
きっぱりと言い切り
立ち去る風の王ヴァルーダにゲルドアス
ゲルドアスは何も言わなかったが
同情と憐れみの表情を見せて立ち去った
「ど、どこが天使だ!!この古・大タヌキぃ!!」
思わず叫んでしまう
三代目リュース公ワイアット お疲れ様…うふ
さて…こちらは恋人達
ヴァルジニテ王女とティエ姫…
王女の方は ため息をついた後で ティエを見ながら微笑んでいる
ティエもまた、赤くなりながら
ヴァルジニテ王女を見て微笑みを返す
「全く…天使の父王ヴァルーダ様には
敵わないな…ふふ」
「そうですね 本当に
心が広くて天使の様な御方です
黒の王宮の方々がとても優しいのは風の王様のお陰だと思います」
「ふふ そうだな 歴史の本を読んだが
昔の黒の王宮は、いびつで血に染まっている」
「まるで、違う世界だな
側室達の血みどろの争いで消息不明の庶子の王子や王女が山の様にいる」
「殺されパンプローナの樹海に捨てられたか
あの王宮の奥にある
光も差さぬ地下牢獄で死んだのだろうな
或いは何処かに人知れずに売られたかも知れない」
「私達の代で黒の王宮のこの空気は終わり・・やがてまた戻るのだろう」
「さて 服を着て、朝食を食べようティエ
そなたは私の側室 愛しい恋人」
「一緒に王宮に住むか?
それとも母親やワイアットの処に戻りたいかな?」
ティエはヴァルジニテ王女にそっとキスをする
「お側に置いて頂けますか?
戦にはついて行けませんか出来る限りお側にいたいです」
「ああ、そうだな そうしょう」
ヴァルジニテ王女もまた、くちづけを返す
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