第14話 古タヌキが二人

微笑みながら、ルアとアインにも丁寧に挨拶をして立ち去ろうとするティエ


そこにワイアットがやって来て ダンスを申し込む

「ティエ姉様、是非ともお願いいたします」

少し頬が赤いワイアット


「わかったわワイアット」テイエが答える

皆がダンスを舞い始める・・・


王女は最初にルアと踊り

次にアインと踊る


どちらの青年も美男子で 美しい絵のようだった

「二人は有望なとても優秀な若者だ そう思うだろう ゲルドアス」


「はい 風の王ヴァルーダ様

ヴァルジニテ王女はどちらを選ばれるのでしょうか?

どちらも相手には相応しいですな」


「黒の王族の血を引き

美しく、とても有能で立派な黒の騎士です」


「二人は一族は失っておりますが

家はどちらも姉妹がおりますゆえ 姉妹の子供に継がせる事が可能です」


「女王となられる時には夫は立場上は黒の王

以前からの前例を考えたら 形だけで権力は有りませんが」

「王配と呼ぶべきでしょうか?」


「そうだな ヴァルジニテ王女は欲張りな処がある故に

二人を夫にするやも知れぬ」


「また、そのようなご冗談を ヴァルーダ王様

この年寄りのゲルドアスを驚かせないで下さいませ」


「我が火焔の王女ヴァルジニテは型破りで

破天荒で天真爛漫な娘だ  常識では計れない

何せ私が心配して泣くからと 内密に動き、数々の戦を

影で鎮めてきた」


「僅かな年齢で始めた

二人の竜人の守護者だけを連れて

白の王都に乗り込み、憐れな又従姉のティエ姫を救い出した


更にはその時に白の国の強固な砦を一つ崩壊させた


一時間足らずで灰塵にした

砦には白の大将軍も勇猛なケンタウルス族の勇者も

いたと言うに

他にも沢山やっておる・・」


「まったく、末恐ろしくも

頼もしい火焔の王女だ ふふ」


「お 王、全て知っておられたのですか?」


「ははは 私の父は黄金の者だ」

青みを帯びた淡い黄緑色の

風の力を示す瞳の色が一時 黄金色に変化する


「父の資質を譲りうけた 多少だが、黄金の力が使える

私の竜人の守護者は嘘が下手で心が良く視える

それに特別な繋がりがあるから」


「だが、黙っておいてくれよ ゲルドアス

一生懸命、私に隠してるのが知られて自分の努力が無駄と解れば

王女が拗ねて泣くやも知れぬから それにまだ16歳の少女

まだ矢面には立せたくない わかってくれるなゲルドアスよ」


「はい黒の王様

やはり、貴方様も並みの魔法の王では有りません」


「ふふタヌキとでも 思うかなゲルドアス」


「立派な大タヌキでございます」

「ははっ誉め言葉と受け取っておくか

何せ私は、優秀な家臣達には頭が上がらんからな」


「頑固者のくせに何を言われてるやら

疫病で恋をした貴族の姫を

亡くされ、初恋の彼女を想い続け・・

ずっと独身を通し続け説得して

結婚をして頂くのに

とても、とても、とて~も長くかかりました」

「そうであったな ふふ」


物影の柱から

二人の会話を偶然、聞いてしまったエリン


目を丸くして、冷や汗たらたら

うわああ~にぶにぶな

天然の天使と思ってたら

実は大タヌキだったのね黒の王様 風の王ヴァルーダさま

年季が入ってるわああ~


「おや?そこにいるのは エリン姫ではないか」

「あ!あの、久しぶりです

お元気そうで何よりでございます」

慌てて、頭を下げ貴婦人の礼をするエリン


「ははっ聞いておったな

まあ、この事は王女には秘密に頼むぞ エリン姫」


黄金色に瞳は再び変わり愉しげに笑う風の王ヴァルーダ

「エリン姫も舞踏会を楽しみなさい」


「美男の黒の貴族達も

愛らしく美しくなった姫を熱い視線で見ておるぞ

ああ…ワイアットとティエ姫の二人のダンスが終わったようだ

ワイアットに踊ってもらいなさい

エリン姫の本命であろう ふふ」


「あ・・あの、はい

失礼します・・・ではまた」わたわたと逃げ出すエリン


「若いとは、良い事だな

年寄りは若者達の未来を守ってやらねばな」

「はい 黒の王 」

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