第13話 舞踏会のダンス
舞踏会
一番最初に王女と踊ったのはティエ
驚く人々の中で、二人は優雅にダンスを舞う
黒い翼の王女に白い翼のテイエは 羽、翼を互いに広げ、時に空中でも舞い踊る
美しい二人は一枚の絵のようだった
人々はため息をつき
舞い踊った二人に拍手喝采を送る
赤くなり微笑むティエ
ティエの頬に軽くキスする王女
真っ赤になるティエ そんなティエの耳元で囁く王女
「久しぶりに逢ったのだ
一緒に今晩、私の部屋で茶でもどうかな?」
「あ…はい!」
「そうか・・うむ」
そんな様子を見て
父親である風の王は一瞬 瞳を大きく開いた後で
優しく二人を見詰めている
修羅場も多くの事も知り尽くしている
酷い過去を持つ
大事な従弟の忘れ形見のティエの事もずっと心配していた
そして・・風の王ヴァルーダは、中年期で彼の場合は止まり 姿はそのままだが
既に老年期に入っている
なお 参考程度に普通は二十歳代で止まるのが通例だが
この戦乱の時代、戦は絶え間なく、疫病も油断ならない
いつ自分が死んでもおかしくない 妻はなく一人残される若い娘が心配だった
だが 愛する者が居れば、やかて立ち直れる
彼は全てを悟り、ただ受け入れて包み込む
ただ一人だけの火焔の世代
強気だが、脆い一面もある可愛い娘
自分が亡き後は・・
誠実で優秀な家臣はいるが
女王として国を背負って生きる運命
ヴァルジニテ王女の幸せを祈る事
天使の心を持つ風の王ヴァルーダはそう決心した
皆に遅れて笑顔で拍手する風の王ヴァルーダ
「王女様・・」
二人の美しい青年が微笑みかける
「ルアとアインか・・ふふ」
微笑むヴァルジニテ王女
年上のルアに遠慮してアインは一歩下がる
二人は互いに目で合図して頷き合う
「ヴァルジニテ王女様
先程のダンスの舞いは素晴らしかったです
どうか我々にも
麗しき王女様と踊る許可を頂けませんか?」
チラリとヴァルジニテ王女はティエを見る
ニコリと笑い
「ヴァルジニテ王女様
最初のダンスの相手を務めさせて頂き光栄に存じます…ではまた」
黒の貴婦人の作法で頭を下げるティエ
「うむ とても楽しかった ではな、また後でティエ姫」
耳元で囁く
「夜の二人の茶会を楽しみにしてるから、約束だぞ
来なかったら泣くからな」
「はい!必ず参ります くすくす
ダンスをお楽しみ下さいませ王女様」
微笑みながら、ルアとアインにも丁寧に
挨拶をして立ち去ろうとする
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