第10話 花の16歳 きらん

「ねぇ・・ティエお姉様」


「聞いた?

王女様に想いを寄せる黒の大貴族の息子達の話」


「いえ、知らないわ

ヴァルジニテ王女様も、もう16歳ですものね」


「とても美しくなられたし 隠し続けていたけど

戦に内密に参加して、数々の手柄を上げてるのは


そうね・・・・案外、にぶにぶの鈍い父王である

天使の風の王ヴァルーダ様とワイアット兄様以外は

皆さん知ってるし」


「勇猛で麗しい火焔の姫様ですもの・・


男性だけでなく女性にも人気急上昇中よね」


ちらんとエリンは姉のティエを見る


心の中で、こっそりと思う

ティエ姉様は勘はいいんだけど


自分自身の事

王女があんなに熱い想い寄せてるのを

全然、気がついてないだから~

そこは、にぶにぶ~よね  ふぅ・・


まあ、押し倒されるのも時間の問題か


「ねぇ、エリン

エリンは先日、黒の王宮に遊びに行っていたでしょう

エリンが気になる殿方はいたの?

それから王様や王女様はどうしておられたの?」」


「気になる殿方はいないわ  姉様いざとなったら

ワイアット兄様にお嫁入りしていいかな~なんて思ってるの


ちょっとにぶにぶの処はあるけど・・優しいし、立派な黒の騎士で

黒の大貴族のリュース公爵ですもの」


「ヴァルーダ王様は相変わらずよ

お元気で、にぶにぶだけど・・


今は内乱も白の国との戦争も小康状態で、疫病も修まってるから

のほほん、のんびりとされてるわ


遠い東洋のお菓子と緑色のお茶を

年寄りの大貴族の人達と飲んでいたわ…

一瞬、ヴァルーダ王様の頭の上に

お花の幻が見えたのは、びっくりかな・・・」


「歴代の黒の王様は威圧感たっぷりで、過酷な支配が多かったらしいけど

まあ、あの善人で天使の様な黒の王ヴァルーダ様には

それは出来ない話よね・・」


「と言っても、この戦乱の時代で、

歴代の魔法の王様としての魔法の力も剣も強いし、必要なら

罪人に重い罪を断罪するから

側近の優秀なゲルドアス様達もいるし・・少なくとも

地方や国境の街はともかく


王都に近いこのララアは安全ね」


「王女様は益々綺麗になっていたわ 花の16歳ですもの


男性にも女性もモテモテね


年寄りや子供達にも優しいから

やはり人気は高いわ


可哀想なのは

ワイアット兄様…はじめ王女様の下僕となっている

黒の貴族の騎士の皆さまかな~」

「相変わらず・・下僕なのね くすくす」


「それから・・あ・・」口ごもるエリン


「エリン?」

「あの、この話は内緒よ ティエ姉様」

「ええ、わかったわエリン」


「ふう 実はねイリシヤ姫がね・・」


「イリシヤ姫って・・確か内乱で家が滅ぼされた

黒の大貴族ルレワ男爵の姉妹の妹姫で

王宮で育てられて・・・今は優秀な薬師

まだ貴女と同じ15歳の姫」


「ええ、愛らしくて可愛いわ」


「彼女、王女様に夢中で 偶然、目撃したけど・・・

庭の片隅で、麻痺の呪文で王女を麻痺で縛って

押し倒してキスしてたわ」


「はい・・え、ウソ」

「本当よ 王女の服を脱がそうとしたところで

王女の魔法の返り討ちにあって、そのまま逃げられたわ」


「王女の話だと三回目だって

王女様は言ってたわ


気が向いたら、襲われていいって

案外、彼女の事は気に入ってるみたい」


「そ、そうなの・・」

声は震え、冷や汗が出るティエ


「後ね・・・」

「え・・まだあるの!?」


「そうよ、まだあるわ あのね 覚えてるかな?

黒の王族の血を引く大貴族

ハルート伯爵の可哀想な息子のルア様」


「ええ、覚えてるわ

ワイアットが彼を助けた

あの時は、まだ13歳だったわね


白の国の国境の付近の領主だった伯爵は

白の国との戦争で戦死され


屋敷のあった場所に白の国の兵士達が押し掛け

一族は皆殺し、他家に嫁に行った姉姫と彼のみ


目の前で家族を失い

運の悪い事に、その白の兵士達は立ちが悪く

彼を乱暴した上に

近くの中立の街の売春宿に彼を売った


数ヶ月後、ワイアットが彼を助けて保護して

数年間、一緒に暮らしたわね


美形で大人しくて優しいとてもいい子だったわ

まあ 彼が救われた数年後で 私も王女様に助けられたけど」


「その後、王宮に引き取られて、

優秀な黒の騎士として戦にも何度も参戦して

大きな成果も上げたし

算術に語学が得意だから


政務の仕事もお手伝いしてるそうね

名家の出で、細身な、とてもハンサムよね」

ニコニコと笑うティエ


「彼 ヴァルジニテ王女様に求婚したって・・」

「まあ!素敵じやない・・

名家の立派な黒の騎士だし 確か、今は二十歳よね

年齢的にも釣り合うわ うふ」


「で・・まあヴァルジニテ王女様も気に入って」

「ええ!!素敵じやない」


「王女様・・・試しに一度、寝てみたいって言ったって・・」


「だ・・大胆ね・・

さすがだわ あの方ならあり得るわ」


「彼は慌て首を横にふって

式も上げてないのに出来ませんって・・・」

「やっぱり黒の騎士よね・・うふ」


「問題は・・・」

「え?」

「寝るのは無理だけど

ご希望なら鞭で叩いて下さいませ・・と」

「はい!?」


「どうも、売春宿にいた時に

そんな趣向が身体に染みついたらしくて・・・

で・・楽しい夜を過ごせたと

ヴァルジニテ王女様は言われたわ」


「あう・・」青くなるティエ

「でね・・」

「なに!!まだあるの!?」

「ええ・・黒の大貴族サシアル公爵の姉弟の弟君アイン様

覚えてる?」


「あ・・疫病で姉姫のリリアン姫と幼い弟のアイン様以外

一族は疫病で皆、亡くなった


儚げで綺麗な少年だったわ


王宮に引き取られて

薬師の仕事や政務の仕事をしてるわね

確か、今は18歳」


「魔法も剣も強くて、いつでも騎士としても活躍する事も出来ると

ワイアットは言ってたわ」


「彼もヴァルジニテ王女に気があるらしくて・・・」

「王女が迫ったら

赤くなって頷いて、何度かデートしたらしいわ」


「あらら~ヴァルジニテ王女様はどちらを選ばれるのかしら?」

「両方、ゲットするって・・

王女様、嬉しそうに言われたわ」


「は?」


「重婚は黒の国では可能ですものね・・ティエ姉様」

「え・・え・・ええっ!?」


「まあ・・夫が複数の妻を持つのは多いけど

妻が複数の夫を持つ例は今はないけど

法としては禁止ではないし

駄目なら片方を愛人にするでしょうね・・」


「ヴァルジニテ王女様は

二人の竜人の守護神を持つ特別な火焔の姫様」

「父王ヴァルーダ様は心が広く、あの性格だもの大丈夫ね」


「ヴァルジニテ王女様は幼い頃から秘密理に

戦に加わり、お陰で領土も少しずつ取り返した


正式に軍に加われば

戦況は一変するわ 間違いなく救世主となられる」


「此処まで戦に長けた魔法の王は例はないわ


助けるのが不可能とされていたティエ姉様も

僅か7歳で助けた上に、砦の一つも壊滅させた」


「砦を壊滅させるのに かかった時間は1時間足らず」


「砦には勇猛で知られた

白の大将軍サシアと

戦上手で有名なケンタウロス族のリアシーもいた

彼らを失い、白の国はかなり困った事態にしばらく陥ったそうよ」


「あ・・」

ティエは瞳を見開き沈黙する

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