第8話 交流

それからも、度々、二人は

暇を見つけてはティエ達に逢いに来る

温泉も気にいった様だった


時にティエ達も、ワイアットに連れられ黒の王宮に

訪れる事もあった


最初、初めて黒の王宮に訪れた時は


ティエは自分の過去や姿は

黒の者より、長い耳以外は白の王族の姿である為に

純血を重んじるあまり 異母兄妹婚を繰り返す

黒の者達に会うのを怖れた


後ろ指程度で済めばいいけれど、それ以上の事をされたら

と思っていた


彼らがティエを

汚らしい存在と思うのではないかと


だがそれは杞憂に過ぎなかった


この時代、風の王ヴァルーダと

後の火焔の女王ヴァルジニテの時代


この時の黒の王宮の空気は前後の時代と

かなり違っていた


ティエの父親は風の王の親しい兄弟同然の従兄弟であり

人々が願い続けた


1300年の戦乱の時代を終わらせようとした英雄の一人で

史上、初の平和条約を打ち立てた一人


そして悲劇の英雄


当時の黒の王、風の王ヴァルーダは

歴代の黒の王と違い、恐怖と威圧で人々を支配する事のない王であり

優しき水の女王や水の王達よりも 更に慈悲深く優しい王


幾つもの疫病に内乱の数々に

無慈悲で残酷な狂王に近い敵国、白の宗主を相手に戦い抜いた

並の魔法の王なら、とうの昔に黒の国は滅んでいた


その上、自身の危険を返りみずに


貴族の妻や娘、幼い子供に女官達を救う為に

火の海に飛び込み助け出して

大火傷を負うのは日常茶飯事


疫病が発生する度に

その真っ只中に飛び込み人々を魔法で癒したり

薬師の才能を活用して薬などで癒すのもまた


日常茶飯事


彼は疫病の一つを根絶する薬を作り敵国の白の国へ

魔法の伝書鳩を千匹飛ばして、製造法や薬を届けたりしている


恩知らずで情け容赦ない

冷酷な白の宗主は倍返しの戦の捕虜の皆殺しだったが

この疫病の根絶で救われた


白の者達にも感謝されている


身を削り、国を護り善政を貫く

天使の様な風の王ヴァルーダは反逆者以外の黒の貴族や民達にも

深く愛され慕われていたのだから


彼の娘、火焔の女王ヴァルジニテもまた

多くの者達に慕われる


気性の激しい火焔の世代の彼女は

彼の様には慈悲深くはなかったが善政を行い、数々の戦に勝利して

領土を取り返し、全ての内乱を鎮圧して禍根の根を絶ち

敵国、白の国を窮地に追い込む


疫病以外からの脅威を

全て取り除く


救世主の黒の女王、火焔の女王、火竜王ヴァルジニテ

その父王の風の王ヴァルーダ

二人は伝説の魔法の王となる


リュース家はその姿と白の血から

後の時代では疎まれる事もあったが 代々の者達は上手く切り抜け

後の女王の遺言により守られた


女王本人も人々は知らなかったが、彼女の火焔の魔力は

最終世代の最後の黒の王の前の世代にあたる火焔の王ナデアと彼の息子

子孫になる未来の火焔の王アジェンダと

ほぼ同格であった


最終世代達を覗けば

最大級である


なお アジェンダ王もまた

両親は異母兄妹であった


母は正室の娘 後の水の女王エルテア、父は側室の息子で火焔である


父ナデアは早く亡くなる


そして数年の悲劇で終わる

史上二回目の白の国との

平和条約は彼の母親エルテア 白の宗主ウィリアムと

黒の女王であり水の女王エルテア達が結ぶが

ウィリアムとエルテア達が殺されて

互いの人質達も死んで終わり


火焔の王アジェンダ王と

ウィリアムの息子

狂王の白の宗主シューオンが血みどろの戦いを続けて

戦乱の時代は激化する事になる


人質の一人

アジェンダ王の妹

人質だった美しい16歳の黒の王女シルフイアは

シューツオンに乱暴された上に首を斬られ

晒し首となり、遺体は行方不明となる

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