第7話 下僕な哀れなワイアット

王女は呟く「本当にティエ姫は美しいな」


ヴァルジニテ王女の視線や表情に、

何か胸騒ぎを覚えるリュース公ことワイアット


「あの ヴァルジニテ王女様」恐る恐るワイアットが声をかける


「なにかな~わが又従兄にして

黒の大貴族の三代目リュース公 そして、そちは黒の王族の家臣であるな


でもってぇ 我が下僕のワイアット殿♪」

にい~んと歯を見せて不敵に笑う


「私はまだ下僕ですか・・いいですけどね

些細な口喧嘩で大喧嘩となり


徹底的に叩きのめされ、貴方に負けましたから


その時に素敵過ぎる笑顔で宣言されました


これから家臣だけでなく ワイアットは我の下僕でもあると・・

あれから1年過ぎましたね」


「しばらく癒しの魔法もあまり効かずに

折れたあばら骨三本と右腕は痛みましたが


確かに貴方は王女で私は家臣です

しかも、怒らせたら一番恐ろしい火焔の世代 私は甘かったです


しかし下僕扱いはそろそろ解放して下さいませ」


「それからティエ姫を見る視線がとても気になるのですが

やらし~おっさんのような・・あるいは肉食獣のような」


「ワイアット諦めて素直になれ」


「下僕から解放されたくば 私に一度でも勝ってから言え

ワイアットがティエ姫が好きなのは知ってる

以前から姫の肖像画を見る目は恋する者の目だ


悪いがティエ姫の事も

諦めてもらうからな・・・くくくっ」


「な?何を考えておられるのですか!?

また何か悪い事を企んでますね!!」


「ははっ!下僕に言う義理はないな」



そこに父親の風の王ヴァルーダが話しかける


「おや、何を話してるのかな~私の可愛い王女よ

仲良いな・・ふふっ」


「はい、父上様

ワイアット兄様と愉しくお喋りを楽しんでました うふふ」


「そうか・・」そう言って王女の頭をなでなでする


「こ、この猫かぶりが!くそ王女!!」

口を歪めワイアットは声に出さずに悪態をつく

にい~んと不気味な笑顔を

ワイアットに向けるヴァルジニテ王女



「又従兄殿♪

ワイアット兄様、ぜひ剣と魔法の練習をしましょうね

私はいずれ王女として 火焔の者として戦地に赴かねばなりません


稽古をつけて下さい

まだ食事には時間が有りますから うふ では父上 また後で」


「ああ、頑張ってくれ私の王女よ  まだ子供ゆえ、手加減を頼むぞワイアット」

にこやかに天使の笑顔の風の王


「さあ、兄様」


「いっ!」

思い切り信じられない怪力で ヴァルジニテ王女はワイアットの腕を

掴み引きずつてゆく


「ほら♪とっと諦めて来いワイアット

先程、私の悪口を心の中で思ってた事など・・・


心を視る黒の王族の黄金の力も

白の王族の力がなくともバレバレじや!!

その性根、叩き直してくれる!」


「あばら骨が折れても

今日は父上や姫達がいるから癒してやるから

心配無用だ・・・くく

楽しませてくれよ・・・ぐふふ」


「た・・・助け下さい!

私が悪いです!許して下さい!」


「知るか♪くくっ」


ティエだけは

ヴァルジニテ王女の不気味な笑顔と

本気で怯えてる表情のワイアットに気がつき

冷や汗が一筋・・・


助けに来たヴァルジニテ王女を見ていて

既に王女の本質に触れ

ヴァルジニテ王女の正体は知ってる・・・


勘の良いティエは

大体の二人の関係を見抜いた


思わず心の中で手を合わせいるティエ

が・・しかし、ティエはまだ

王女の毒牙(?)が既に

自分に向いてるとは知るよしもなかった・・


多少ボロボロになった

ワイアットとヴァルジニテ王女が戻り、楽しい食事の時間を過ごす


王女は世話好きらしく

愉しげにティエの妹エリンと遊んでいる

傍目には、年が近い女の子達が仲良く遊んでいる様に見えるが


ティエから見れば、大人びた王女ヴァルジニテがエリンの為に

遊んであげている様に思えた


実際の処はそうであった


一緒に温泉に入ったり

本を読んだりして過ごす


風の王、黒の王ヴァルーダは楽しそうにワイアットに

母親のレイアナとの茶会をして、楽しんでいた


2日後に黒の王ヴァルーダと王女ヴァルジニテは

自分たちの王宮に帰っていた

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