第5話 王女たちの会話

テイエ達との別室 


風にあたろうとテイエが通りかかる

そこで二人の会話を聞いてしまう


ゲルドアスは真っ青になる


ティエ姫が白の王都の屋敷で、どのように囚われ

過ごしたかを

屋敷の下働きや助けて逃がした側室の一人から聞き出した話をする王女


「ティエ姫様はなんと辛い地獄の様な思いをされていたとは

まさか、此処まで・・・」


「ああ、その上に

亡くなられた父であるワイア伯爵の晒し首を見せられ

流産して、もう子供は出来ない身体になられた」


「そうだ 今は翼は斬られてない

幸い黒の者は再生能力がある

しかし、それ故に、何度も翼は切られたそうだ」


「再生能力があるとはいえ

痛覚はある、とても痛かっただろう

暫くは療養させてあげないとな


ワイアットの

リュース公の領地、ララアには良い温泉地がある


そこに、先日のリュース 公の戦の手柄として屋敷を与えてはどうかな?」


「はい、良い案だと思います王女様」


「うむ」

「しかし、あの手柄は本当は、内緒で戦に加わり

ヴァルジニテ王女が影でなさった事ですが・・・」


「ゲルドアスよ 硬い事を言うでない

父王ヴァルーダ父上に

また知られたら、心配する上に泣かれるからな・・・


リュース公にも内緒だ また、拗ねるから」


「神に与えられた火焔の者を

早く使いこなして欲しいと我は思うのだが

内密で動くのは手間がかかってしょうがない それに王として

必要な勉学も全て習得済みだ」


「ああ 内乱がまた起こってたな 情報を渡せゲルド」

「また、行かれるのですか・・内密に

本当は貴方様は、たった一人の跡継ぎの王女で まだ7歳なのですよ

何かあったら、どうするのですか」


「内乱の火が大きくなれば そんな甘い事は言えんぞゲルドアス

一時は、強い魔法の王、風の王とはいえ

歴代の魔法の王として魔力が強い


我が父王ヴァルーダ父上でも

王都近くまで、占領されたではないか

まだ領土も多くは敵どもに奪われたままだ」


「早く奪い返したい」


「それに父王は、もう130歳をかなり過ぎた

黒の者や白の者は長生きだが、早く楽をさせてやりたい


敵国の白の国に反逆者どもが

父王ヴァルーダ父上を苦しめている


先日は無理が祟り、しばらく寝込んだしな

睡眠時間が三時間前後に

国務も反逆者どものお陰で激務だ」


「まあ 疫病だけはどうにも、ならない」


「優秀な薬師でもある父王に

薬師の連中に頑張ってもらうしかない」

ふぅ・・・とため息をつくヴァルジニテ王女


「解りました 情報をお渡しいたします

また黒の王、風の王ヴァルーダ様には竜人の守護者を借り受けて下さいませ

どうかくれぐれもお気をつけて下さい」

ゲルドアスがうやうやしく頭を下げる


「うむ 頼むぞゲルド

さて食事だ♪腹がへった

何せ食べ盛りだからな…うふふ」


普通の子供の笑顔の王女

なんとなく、ゲルドアスはホッとする



「・・・本当に王女様いえ女王様 何者なんですか?」デアイルに他の仲間の皆さま

「うふふ 救世主の火焔の女王様ですわ」



数ヶ月後


ティエと彼女の家族はリュース公ワイアットの招待で

黒の王家からの贈り物の

ララアの領地の温泉地にある屋敷に滞在していた


「本当にホッとするわね

綺麗で広くて大きな屋敷に美しい広い庭に温泉、温泉はとても心地好いわ

ティエにエリン」ティエの母親のレイアナが言う


「ええ そうですねお母様 エリン」

「私もそう思いますティエお姉様」

11歳の妹のエリンも言う


母親のレイアナもまた

あの時に白の国に滞在していたが、

運良く早めに彼女は黒の国に帰国した


その時に妹のエリンを懐妊していたのだった

夫のワイア伯爵が処刑され

娘のティエが行方不明になった後


自分の実家の黒の貴族ハリア家は、内乱に巻き込まれ

一族もろとも滅ぼされ絶えてしまった


遺されていた夫のワイア伯爵の屋敷もまた、

内乱で灰塵となった

頼るのは嫁ぎ先のリュース家のみで、彼らの世話になり、共に住んでいた


「本当にリュース家に

御世話になってばかりで申し訳ないわ」一人言のように母親のレイアナは言う

「お母様」

戸惑いながら軽く笑みを浮かべてティエは呟く


「叔母様、ティエお姉様

その様に気にされないで下さい

叔父上のワイア伯爵は、立派な業績を残されました


長い歴史の中で史上初の平和条約


そして残念な事ですが破られ犠牲となった

黒の大貴族リュース公としても、身内としても

感謝とお詫びをどれだけ言えばいいか、解らないのですよ

それにティエお姉様には療養が必要なのです」


「ワイアット」


「叔母様 ティエお姉様

エリンもずっと此処に住んで構いませんから

また珍しい美味しい食材が手に入りましたよ


今日はご馳走ですから楽しみにしてて下さい

何せ大事なお客様も来られますからね」

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