第3話 テイエ姫と火焔の王女 白の王都からの逃亡

「罪なき、か弱き乙女を苦しめた代価を支払え!

我が叔父君を惨殺する事に加わったのも重き罪だ!」


「この白の国がもっとも恐れる火焔の者は現れたのだ!!

やがて白の宗主にも支払って貰う」


彼女はその言葉通り、焼きながら切り刻んでいきました

赤き火焔色の瞳は宝石の如く輝いてみえました


奴を殺した後 私の方を見て、にっこりと笑い 

「ワイア伯爵の長女ティエ姫 我が又従姉殿

初めましてだな

長きに渡り辛い思いをさせた・・・すまない」


「父は遅い結婚で 神より我 火焔の子供を与えられた

黒の王国を救う為に、我は生まれてきた

我の名はヴァルジニテ・・」


「疫病以外なら我は救う・・救える


我が父の風の王ヴァルーダ父上様も

そなたの家族や私の又従兄のリュース公も

ずっとそなたの事を心配して案じておった


さあ黒の国へ家族の元に帰るぞ」


「何か大事な荷物はあるか?

多くは持ってはゆけぬが あるなら取りにゆこうか?」


「いえ、これだけです」胸元のペンダントを握る

「このペンダントの中には父や家族の小さな絵があります」


「わかった 参ろう」


竜人の一人に目で合図を送る王女ヴァルジニテ

つかつかと竜人は近ずきティエを抱え上げた

「きゃあ!」「では参るか」


そのまま庭に出る

「見張りの兵士達がいないわ なんて静かなの?」


「誰も、もうおらぬ

この屋敷の者達は、ほとんど殺した


生きてるのは、魔法で眠らせた他の側室に

女官達や下働きくらい」


「そなたを汚したあの外道の仲間

友人達とやらも他の側室相手に

彼女を汚しておったから、ついでに消し炭にしておいた」


「幸い あの外道は妻や子はおらぬ ふふ」

怖い笑顔で呟く


「怖がらなくていい

火焔の世代は敵には容赦ないが身内は激甘だ

私の大事な又従姉を十年以上苦しめた その代価を支払ってもらった」

「姫・・とても美しい・・・」


「天使の様な顔立ちに

銀の髪に紫の瞳は白の者 白の王族の祖母譲りだな


白の者達は、天使か妖精の如く麗しい者達が多い」


「あの外道どもは、白の者にしては、醜い

外道の性格が顔を醜くしたのだろう


我らの祖母は、白の国を追われた可哀想な姫だった

私の祖母でもある」


「長い耳は、私と同じ形 黒の王族」

「羽は何色か聞いても良いかな?」


「は、はい

白です…今は奴に切り落とされ有りませんが

黒の王族や貴族の血のお陰で、再生能力が有ります

ただ…その為に、再生する度に切り落とされ

とても痛い思いをしましたが」


顔をしかめる王女


「酷いものだ もう二度とその様な思いはさせぬ安心しろ」

「あの突然の出来事で

御礼もまだ言ってませんでした有難うございます 仇もとって頂き感謝します」

涙が溢れ零れ落ちる


ヴァルジニテ王女はじっとティエを見て、

抱き上げた竜人に目で合図を送る


竜人はティエを王女の目線まで、降ろす

そっと指先で、涙を拭い

頬にキスをする


そして、耳元で竜人達に解らぬ様に、

流暢な白の国の言葉で甘く囁いた

「早く元気になってくれ姫・・・本当に長く助けてやれずにすまない」


「姫の心の深い傷が

少しは癒える頃には私は大人の姿になる


姫は黒も白も両方の血を

持っている故に、成長はそろそろ止まり、死ぬ迄その姿 釣り合いは取れる

やがて そなたを私のものにして良いか・・」「そなたはとても美しい」


「又従兄のリュース公ラリアットも

そなたにずっと恋心を抱いておったが ふふ

ラリアットには諦めて貰おうか」


「え、あの王女様?

それはどうゆう意味なのですか?」



ここで話を聞いていた 魔法使いがさり気に言う

「テイエさんは7歳前後の女の子にプロポーズされたですね

流石はわずか七歳前後とはいえ あの女王さまです」

ちょっとや~らしい笑みを浮かべる皆様方


「ええ・・今思うとそうですね」ぽっと赤くなりテイエ

白い尻尾がフリフリ そうして話は戻る



「あの、父の双子の兄のリュース公は?

叔父のリナス様は?どうしたのですか」


そうして私はヴァルジニテ王女に問いました


「彼は・・そなたの父が処刑された後の数ヶ月後に

謎の死を遂げた・・・


今はその息子の

我らの又従兄のラリアットがリュース公だ」


「あ・・・叔父様」


「気をしっかりとな」


「庭に隠してある飛び竜に乗って

夜の闇に紛れ、敵国の白の王都から逃出だ


此処はまだ敵国の地だからな油断は出来ぬ」


「はいヴァルジニテ王女様」


「国境付近の警備軍の砦は

潰しておいたから、時間稼ぎは出来る追っ手の心配もない」

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