story6

「大和!大和‼︎」


んぅ…、しゃもじとか時代遅れかよ…。


--はっ!


「あんたいつになっても起きないんだから…。」


「お、おぉ…。」


まじか。俺の主人公デビューは幻だったのか。

神様、まだ先延ばしにして楽しむ気か。

神様に腹が立つな。


《君はずっとモブなのだよ。いい加減受け入れなさい。》


--ん?


今何か聞こえた気がしたが、気のせいだろう。


朝飯を食いに今へ向かう途中、ふと玄関をみると、

少し大きめの段ボールが置かれていた。


おそらく、昨日頼んだ“youth-Ⅲ”だろう。


「あ、大和おきたのか。」


「うん。」


善宗は朝から何かの機械を分解している。

ざっと見た感じ、家電だろうか。


「空気清浄機よ。フィルター変えたらすごい音がして…。」


--なるほど。


多分だが、今、涼子が能力を使った。

俺とは違って、はっきり、心が文字として見えるのだそうだ。


たとえば、窃盗した男の心を読めば、


『警察、逮捕、逃走、弁護士、裁判、逃走車、かりんちゃん…』


--少し余計なものを入れてしまった。


ちなみにだが、“かりんちゃん”は、俺の推しである。

歌い手グループ“four leaf”の黄色担当として活動している。


まず歌声が、天使なのである。

デビュー曲の“spring dash”は、ものすごい高音も、

少しも声を崩すことなく可愛く歌い上げている。

最近リリースした“flower loving”は、

かりんちゃんが作詞した曲で、

グループ1位の人気曲なのだ。


--これぐらいにしておこう。


推しの話をし出すと止まらなくなってしまうのである。

まあ、推しだから仕方ない。


皿の上のスクランブルエッグを箸でかきこみ、

トーストも2、3口で食べ終え、

コップの牛乳を流し込んで完食。


あらかじめ部屋から持ってきていたカバンに教科書類を入れ、

それを背負って家を出た。


ふと空を見上げると、飛行機が雲を作って飛んでいた。

だがバランスを崩しているように見える。


とっさに、パイロットのこころの色を読んだ。

うすだいだい色、焦りの心だ。


--おい?やばくないか?


飛行機雲が黒に変わってきているのが見える。

もう、これは手遅れだ。

機体がさらにフラついている。


と、そこへ隣のクラスの…えーっと…

名前を忘れた。


「どうしたのー?」


「い、い、いや。な、なんでもございません…!」


--なんで敬語なんだよ


「なんで敬語なのよ笑」


心の声とハモるな。

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