story3

我が家に着いた。

うちの家は2階建ての一軒家。確か父が35年ローンで買った家だ。


門を開け、庭を通り、ドアノブに手をかける。


--ん、、?何かの気配がする…


怪しい空気を感じながらも、腕時計型の端末、“youth-Ⅱ”で

ドアのロックを解除。中へ入った。


家の中から、かすかに薬品の匂いがする。

心臓の鼓動が跳ね上がっていることを自覚しながら、奥へと進む。


--リビングの電気はついている…。


リビングに入るとそこには…。


父が電動ドライバーを持って何かを分解していた。

母はものすごい匂いのする料理を作っていた。


--だろうな。


なんの変哲もない、我が家の日常だ。

別に、ライトノベル的な展開を求めていたわけではないが、

少し期待を裏切られた気にはなった。


「お前のそいつをちと貸してくれ」


父・善宗が自分の手首を指差して言った。

俺は自分の“youth-Ⅱ”を外し、父へ投げ渡した。


「よし、どうだ?」


『system-KIYOMIZU 作動。ユーザー清水大和、を確認。

こんにちは。私はsystem-KIYOMIZU。よろしくです。』


「おぉ、こいつはすげえや」


『お褒めいただき、光栄です。』


「父さん、これの開発費はいったいどこから?」


「お前が小学生の頃使わなかった、自由研究の

人工知能プログラミング用キットを改造させてもらった。」


「よくそんなもの見つけたね。」


「今日大掃除したのよ。」


母が怪しい料理が大量に入った鍋を持ってやってきた。

ほんとに、気持ち悪い匂いがする。


「おぉ…、これはまた独創的なものだね…。」


「あ、これは私考案の料理じゃないわよ?

今朝、隣の小幡さんに教えてもらったの!さあ食べましょ!」


母・涼子は笑顔でおたまいっぱいにすくい、

自分の取り皿によそった。


「俺、お腹いっぱいです…。」


「俺もだ…。」


「あら、親子揃って私の料理を拒む気?」


「「いえ!食べさせていただきます!」」


地獄が始まった。

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