story2

「これにて本日の授業を終了します。

出来るだけ速やかに準備をし、帰宅してください。」


教師の高齢化がきっかけで、3年前に導入された

クラス担任のロボットだ。


まあ他の学校ではとっくの昔に導入されていたのだが、

うちの学校の「人には人が教育」という謎の教育方針を

推していた前校長が、頑なに導入しなかったのだ。


結局、授業の内容自体は変わりなく、むしろロボットの方が雑談なんかもなく

すんなり授業が終わって、いいぐらいだ。


鞄を手に持ち、人でごった返している廊下に出た。

放課後はいつもこうだ。

校門にたどり着くのに苦労する。


あっと、校長がお怒りのようだ。

赤色の心が見える。


「どういう事だね。今日までだと言ったはずだが?」


説教を食らっているのは、生徒指導部の曽根だ。


「申し訳ありません、間に合いませんでした。」


しかし、こんなに校長が怒るなんて

一体曽根は何をやらかしたのだろうか。


「全く…。もういい!わたしから直接予約しておく!

あかりちゃ〜んっごめんね〜、すぐに今回の

“セブンスターズ設立1周年ライブ”予約するからねぇ」


--なんだこいつ。


どうやら赤は、曽根の色だったようだ。


校門を出た。俺の通う東大路高校周辺は

観光地の近くというのもあって常に混雑している。


バス停でバスを待っていると、サッカー部の平塚匠が、

女子を大量に引き連れてやってきた。


平塚の心にはおだやかな恋の桃色が見えたのだが…。

その周りの女子には、恨み・嫉妬の紫が見える。


ポロリ、と平塚の周りの女子がペンを落とした。

俺がとって渡そうとすると、すごい目で見られた。


--え⁉︎俺なんかやらかした⁉︎


と、自分の行動を振り返って考え、一つの結論に至った。


--平塚に拾って欲しくてわざと落としたんだ…。


他の人間と関わると疲れる、と思った大和だった。

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