story1

俺は超能力者だ。


--え?痛いだって?


違う違う、そういうんじゃない。

僕は本気で超能力を使える。


なんなら診断書を見せようか?

ほら。


『〈診断書〉病名:越通常能力2級

詳細:心情理解等精神的能力。

その他備考:できる限り能力を抑えること。


中央病院 第2医療室』


この通り。別に痛い事言ってるわけじゃないのよ。

まあただこの能力、あんま使えないのよね。


--特にこの、なんの取り柄もない陰キャにはね。


〜 〜 〜


キーンコーンカーンコォ〜ンキィン⤴︎


--あ、またスピーカー壊れてんじゃねえか。


「おらっ!」


なぜか頭にチョップを食らった。

クラスメートの木村だ。こいつは、普通の人間。


「またボッチでぶつぶつなんか言ってんのか?」


--何か君に迷惑かけた?


あ、だめだ。これが陰キャの考え方らしい。

つい最近、『陰キャを脱する5の方法』を読んで知った。


だがこの考え方というのは、これまでの人生で

ずっと用いてきたもので、そう簡単に変えられやしない。


まあでも変えてみようとはしている。


「え、まあ、そんなところだよ。」


「ってか1限なんだっけ?」


「音楽だよ。」


「やっべ教科書忘れた」


「ドンマイ!」


目一杯の笑顔で言ったが、どうやら僕に似合わなかったようだ。

木村がぽかーんと見つめてくる。


「お、おう。」


木村は男集団の方へ走り去っていった。


別に仲がいいわけではないが、

クラスの中で唯一、話しててデメリットのない存在だった。


--あ、いけない。またあの本の悪い例をしてしまった。


っていうかそもそもあの本書いてるやつも

かなりの陰キャなんじゃないか?


そんなことを考えていると、隣のクラスの教育ロボットが

警告にやってきた。


「速やかに着席してください。着席しない場合、

成績に影響する場合があります。」


--はいはい。

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