第3話ルール

「はっ!」

俺は再び自分のベッドから勢いよく起き上がる。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、あれ?俺死んだはずじゃ?」

俺は自分の手がちゃんとついてるか確認する。大丈夫、ちゃんと繋がってる。


「どういうことだよこれ、なんで俺生きてるんだ?」

「目が覚めたみたいだね、いいよその疑問に答えてあげる、この世界、リマインドで死んだ場合最初に寝ていた部屋に戻されるルールがある、そして君はあの夢鬼に殺されてこの部屋に戻ってきたって訳」

戸惑っていた俺に落ち着いた声色で諭すようにベッドの横から現れたミラは紫の瞳を真っ直ぐ俺に向けそう言った。


「すごいな、てことは無限に死ねるのか?」

「うんまぁそうだけど、私としてはあんまり死んで欲しくないかな、一応パートナーだし」

ミラは心配そうに俺を見つめる。

いや、別にわざと死にに行こうしてる訳じゃないんだけどな。


「大丈夫、死に急ぐ気はさらさらないよ、だからそんな顔をしないでくれ」

「そう?本当かなぁ?」

俺はの顔を睨み付けるように見てくるミラは続けて


「まぁいいや、とりあえず君には妖力を手に入れて貰わないとね、ついてきて」

「おう」

俺は短く答えベッドから降りて、部屋を出たミラに続き、俺も部屋を出た。


部屋を出ると先程とは打って変わり、俺の家の前にあったのはディジニーランドではなく、オーストラリアにある有名な石、ストーンヘンジであった。

「え?なんか風景変わってない?」

「うん、ここは人間の魂が作り出す夢の世界だからね、風景もコロコロ変わるのさ、けどプレイヤーである君の家の位置は変わらないよ、安心してね」

俺が戸惑ってオロオロしていると落ち着いた声色で俺を安心させるようにミラはそう言った。


その後ミラは隣に立っている俺の方にその綺麗な紫の瞳を向け

「そしてぇ、さっき妖力があれば夢鬼を倒すことも可能って私言ったじゃん」

「うん」

「その妖力の獲得方法って言うのはね?」

「言うのは?」

「健康な人間の魂の悩みを聞くことなのです!」

パチパチパチとよく分からない拍手をしながら高らかにそう言ったミラ。



「健康な人間の魂の悩みを聞く?」

俺はそんなことを頭の片隅で考えながら、ミラが言った、悩みを聞くという謎めいたことへの質問をする。

「そう!人間というのは誰しもが大なり小なり悩みを抱えているものなんだ」

へー、それは知らなかった、ノンストレスな人間はどこかには存在していると実は思っていたんだけど。


「しかも、この世界リマインドでは普段つい押し殺してしまう不満や悩みをここでは吐露してしまうのだよ」

「まじかよ、隠し事ができないってことか?」

「うんそゆこと」

うわぁー、俺もここで悩みとか打ち明けてたのかなぁ、だとしたらなんか恥ずいわー


「そしてその悩める魂達の悩みを聞くことで夢鬼を倒すことが可能な力”妖力”を手に入れることができる」

「え?なんで?」

俺はまず疑問に思ったことを聞いた。


「さぁ?それはよく分かってない、けど確かに妖力という力は存在していてそれは悩める魂の問題を解決することで手に入る、まぁ死神は元々持ってるんだけどね、そして死神もその力で夢鬼を退治しているんだ」

「へー、不思議だなぁ」

俺はうんうんと首を上下に振り、理解ししていることを体で表現する。


「じゃあさ、妖力ってこうなんかすげー力使えるの?でっけー剣を作ったりとかさ」

俺はよくラノベで見ているファンタジーな力を想像しながら身振り手振りで表す。


「うーん、そういうのは妖力を手に入れてから説明したいから、まずは魂達の悩みを聞こうか」

そう言ってミラは歩き出した。


「了解」

俺もミラの後ろを着いていくように歩き出した。


「あっ、いたいたあれが悩める魂というやつだよ」

俺がミラの後ろを着いて歩いているとミラは突然前方を指さした、その先にいたのは男子高校生くらいの年齢の男だった。


「なんか、普通だな」

静香とは違い、はっきりと体が見えている。

って

「そうだ!静香は!?静香は大丈夫なのかよ!」

「あー、静香ちゃんならもう起きてるからこの世界にはもういないよ」

俺がミラの肩を掴んで前後ろに体を揺すると、それが鬱陶しかったのか俺の手を払い除けながらミラはそう言った。


「言ったでしょ?リマインドは夢の世界って、だからその人が目から覚めればリマインドからは消えるんだ、しかもラッキーなことに静香ちゃんはさっきのイノシシのような夢鬼に喰われそうになった瞬間目が覚めたみたいだから、今も元気に生きてるよ、随分早起きみたいだね」

「そっかぁ、良かったぁ」

俺は静香が生きていると聞いて、心底ほっとする。


「君は本当に友達が大事なんだね」

「ああ、俺の命より友達の命の方が大事だからな」

そう言ってにっこりと快活な笑顔を見せるミラ。


「けどね、いくら友達の命が大事だからって自分を蔑ろにしちゃダメだよ」

ミラは俺の鼻先に人差し指を当てて、口をどがらせた。


「わかった」

俺はそう短く答えた。


「ならよし!じゃあ早速お悩み相談と行こうか!」

「おー」

そしてミラは俺の答えに満足したのか、右手を腰に手を当て、左手の人差し指を男子高校生の方向に向け、元気にそう言った。そして俺もミラに習い空に向けて元気に拳を突き上げた。





















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