第4話今日、俺は今日、初めてお悩み相談をする
「はぁ、どうしたらいいんだろ」
「どうしたんですか?」
俺が高校生の魂のところまで行くと、その男子高校生は俺にまで聞こえるほどでかい溜息をついた。そして俺がその高校生の背中に向かって話しかけるとその高校生はビクッとした様子で振り向いた。
「誰ですか?」
「あー、えーっと悩みを聞く使者みたいな者でーす」
警戒しながらその高校生は聞く、それに対し俺はなるべく警戒させないように優しい声で身振り手振りを加えながらそう言った。
「あ、なるほど、じゃあ俺の悩み聞いてくれませんか?」
「え?」
余りにも早く信用しすぎじゃない?いいのかな?俺はそのことを聞こうとミラの方に顔を向ける。すると俺の顔で察したのか、ミラは俺の耳元まで口を持ってきて、高校生に聞こえないくらいのボリュームで
「多分、すごくピュアな人なんじゃない?疑うことを知らない人なんだと思う」
「あーなるほどね」
俺もミラと同じくらいのボリュームで答えた。
「てか、ミラのことこの人は見えてるの?」
「うん、見えてるよ、現実の世界では死神は見えないけど、リマインドでは普通の人として認識できるんだ」
「へー」
俺はどういう仕組みだ?と思いながらも適当な相槌を返した。
「あのー、どうでしょうか?聞いてくれますか?」
「あ!全然聞きます」
そして俺は姿勢と視線を高校生に向き直し、話を聞く準備をする。
「ありがとうございます!、、、では聞いてください、そうそれは三日前のこと·····」
男子高校生は深く深く礼をした後、姿勢を正してから語り出した。
「あの日、俺はいつも通り学校が終わって帰ろうとしていました、そして帰り道を歩いていると学校に忘れ物をしていることを思い出したんです、急いで学校に戻ってみると俺の忘れ物は一人のある美少女が手にしていたんです」
(うわぁー、これ恋愛系のやつだぁ、俺苦手なんだよなぁ)
俺はそう思い若干眉を潜める。
俺は昔女子の恋愛相談に乗ったことがあるのだが、「自分で決めれば?」とカッコつけてしまい、次の日からその女子と全く喋らなくなってしまった過去があるのだ。だから余り恋愛相談はしたくないのだが·····
そして俺は仲間を探すため横目でミラを見る。
しかし、ミラは俺とは対照的に目を輝かせ、体を上下に揺らして凄く興味津々だった。
「そしてですね、その美少女は言ったんです!「これ君の?」って!!!!」
高校生は「くぅーーー!」と拳を握りしめて、その時のことを思い浮かべているのだろう、心底嬉しそうだった。
「まぁその瞬間ですね、俺がその子のことを好きになってしまったのは」
「キャーーーーーーーッ!」
ミラは両手の掌を頬っぺに当てて、叫んだ。
何故女子はこういう話が大好きなのだろうか?俺は到底理解できぬ。
と俺はどんよりとした目でミラを見ていた。
「それでそれで?告った?告ちゃった?」
「いや、まだなんです、でも告ろうとは思ってて、けどいつどこで告ればいいか分からないんです」
「なるほどぉ、それが悩みって訳だね」
俺はいつの間にか蚊帳の外にいた。もうミラと高校生だけで話が完結してやがる。
「もういっそ告ちゃえば?場所や時間なんて気にしなくてもいいと思う、多分その女の子が君のことを気にかけていたのならOKしてくれると思うよ」
「気にかけていなかったら?」
「··········」
高校生の問いにミラは目を逸らし、何も答えなかった。
「まぁ、とにかく当たって砕けろってこと!!」
目を元の位置に戻し、開き直ったように大声でそんなことを言った。
「なるほど!参考になりました!」
「いやいやいやいや、ちょっと待て」
今にも悩みが解消されそうだったので、流石に俺は二人の間に入ることにした。
「流石にそれだけじゃ、ただ失敗するだけです、それに話を聞いてるとその女の子と今まであんまり話したことなかったんですよね?」
「あ、はい」
突然割り込んで来た俺に高校生は少し戸惑っいたが、何とか答えている。
「ふぅ、じゃあまずはその女の子との仲を深めた方が言い、その後デートに誘ってください、場所はどこでもいいですけど、とにかく自分がエスコートをするのを忘れないでください、そして仲が深まった後、最高の場所で、最高の景色が見える、その瞬間に告白してください、そうですね文化祭の後夜祭の時の屋上などがいいと思います」
俺は開き始めた口を一度も止めることなく、勢いに任せて自分の意見を放った。
「なるほど!すごく参考になりました!早速実践してみたいと思います!」
「いやー、ちょっとキモイかもー」
その俺の意見に対しての二人の反応は全くの正反対であった。
「いや、キモくないって!これが普通だって絶対、だって女子はロマンスを求めるものでしょーが!」
「はぁ、君は全然分かってないよ湊くん、乙女心ってやつをね」
ミラはビシッと指を俺の鼻先に当てて、俺を咎めるようにそう言った。
「いい?乙女って言うのはね?案外ロマンスを求めてない人が多いんだよ、恋する乙女が求めているのはお金と性格ぐらいのものだよ、君は女子に理想を持ちすぎだね」
「いや、絶対違うってー!!女子は理想的な告白を望んでいるはずなんだ!」
俺は頭を抱え、ミラから発せられた新たな女子についての情報を取り入れないように自分にそう言い聞かせる。
「現実を見るんだ!君は一度でも誰かと付き合ったことはあるのかい!?」
「ぐはぁっ!!!!」
俺はその銃弾のように俺の胸に突き刺さったミラの言葉を受け、膝から崩れ落ちる。
そうだ、俺は一度るーに最高のロケーティング、最高の瞬間であろう時に一度告白したことがある、まぁ結果は散々であったのだが·····
「けど、けどそれでもぉ!」
「フゥ、けどもそれでももない、あるのは残酷な現実だけさ」
俺が苦し紛れに何かを言おうとしたらそれを遮るようにミラはすかしたようにそう言った。
「貴様ァ!死神だからといって調子に乗るなよぉ!」
「ふん!そんな風に拳を握ったって私には勝てないよ!」
「言ったな?こらぁ!!」
「さぁ、かかってきな!」
「あ、あのー、俺はどっちを信じればいいんでしょうか?」
今にも俺とミラの戦争が始まろうとしていた時に俺とミラの間に入ってきたのは蚊帳の外にされていた男子高校生であった。
「あ、すいません!」
「ごめんなさい」
そのことに気づいた俺たちは俺、ミラの順で頭を下げる。
「あ、いえ、無視されてたのは全然気にしてないんですけど、どう告白するのがいいかっていうのを聞きたくて」
「うーん、結局それは自分次第なんだと思います」
「そうですね、ミラの言う通り、その女の子も貴方が決めた貴方なりの告白の仕方を望んでいるじゃないでしょうか?だから俺達の意見はあくまでも参考にするだけに留めておいた方がいいと思います」
そう俺達が諭すように男子高校生に語り掛けると、高校生はぱぁと顔が明るくなり
「ありがとございます、とてもいい話が聞けました、自分なりの告白の仕方·····難しいけど頑張って見たいと思います!」
そう言って笑顔のまま男子高校生の体はだんだん薄れていき最後には消えてしまった。
多分目が覚めたんだろう
「このことをあの人は覚えていないんだよね?」
俺はミラにそう聞く。
「うん、ちょっと寂しいよね」
「ああ、ちょっとな·····」
二人の間に少し切ない雰囲気が流れ始めたその時であった。
「え!?何これ!?」
急に俺の体が光始めた。それはもう強烈な光を放ち始めた。
「お、妖力の摂取が始まったようだね?」
「これがミラの言ってた妖力ってやつ!?なんかこう懐かしい感じなんだけど!?」
「?、その表現はよく分からないけど、それが妖力なのは確かだよ、ははオモロ」
ミラはめちゃくちゃに光ってる俺を少し面白可笑しそうに笑いながらそう言った。
うわぁー、これが妖力かよ、何か金色に光ってるしこう体の奥底から力が湧き上がっていくようだ。
ボン!
「うぉ!」
そして俺の体を纏っていた光は急に大きな音を立てて消え去っていった。
「どう?気分は?」
「なんつーか、何も感じねーわ、なんかもっと劇的な変化があるのかな?って思ってたんだけど、案外何も変わってないしな」
ミラが小首を傾げて可愛くそう尋ねてきたので、手をグッパーしながら俺は正直な感想をミラに伝えた。
「まぁ、そりゃそうだ、まだ君は妖力を纏っていないんだから」
「妖力を纏う?」
俺が聞き返すとミラは急に目を瞑り、そして瞬間目をかっ!とはち切れんばかりに見開いた。
「うわっ!」
するとミラの全身から黄金に光り輝く光が溢れ始めた。
「これが妖力を纏うということ、さ、湊くんもやって見て?」
「いやできるか!?」
「できるよ、まずは目を瞑って、その後自分の体に流れている血液の流れを感じ取るの、そして最後にその血液の中にある妖力を理解する、すると妖力を纏えるよ」
俺は渋々ながらもミラの言う通りに目を瞑り、血液の流れとやらを感じてみる。
するとその血液の中を駆け巡る、ほの暖かい何かがあるのを感じた。
その何かに意識を集中させる。
するとその何かが、だんだんと熱くなっていく、握り立ておにぎりくらいの温度だったものが、熱々ラーメンくらいの温度になっていき、そして俺の血管がまるで膨張しているかのように感じられた。
そしてついにその何かが弾けた。
「うぉっ!」
俺からもミラと同じくらいの大きさの光がたち始めた。
「な!?」
「うへーこれが妖力かー、すげー強くなった気がするわ」
俺はその場でシャードーボクシングをし始める。
するといつもの千倍くらいのスピードで拳を突き出すことが出来た。
妖力ってすげー
「なんなのよ、その大きさは!?」
「?、どうしたんだよ?ミラ」
「どうしたも、何も、何なの?その大きさの妖力は!?」
見るとミラは酷く戸惑っている様子だった。
紫の瞳がとても揺れているのがその証拠だ。
「?、何言ってんだ、ミラと同じくらいだろ」
「それがおかしいのよ!?なんで湊君より先輩の私が湊君と同じ潜在妖力量なの!」
「潜在妖力量?」
また不思議な単語がでてきた。
「潜在妖力量、それはその人間本来が元々持っている妖力の量、そしてそれは妖力の容量でもあるの、悩める魂の悩み事を解決すると貰えるのが単純な妖力、けどそれは無限に貰える訳じゃなくて、潜在妖力量によってその上限が決まる、極めつけにその潜在妖力量を増やす方法はシナリオボスを倒す他ない、つまり君は·····」
「天才ってことかな?」
俺はミラの話に続くように鼻を伸ばしながら自慢気にそう答えた。
「そう、なる、ね」
ミラはとても驚愕していた、そこまで異常なほどのものなのだろうか?なんか嬉しいわ。
「ちなみに俺は何人に一人くらいの才能な訳?」
と俺がつい聞いてみたかったことを自慢気に聞いてみる。
「そうだね、五百万人に一人くらいの才能は持っていると思う」
「·····、マジかよ」
流石の俺もその数に若干引いてしまった。
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