第100話   幕間 〜 岡部勇斗

 学校で晃と別れたあと、俺は駅前のアーケード街で日課のウォーキング・・・という名の徘徊をしていた。

「勇斗、今日は優愛ちゃんと一緒で良いなぁ!」

 馴染の肉屋のオヤジが、でかい声で話しかけてくる。

「こんにちは〜。たまには一緒にいてやらないと、コイツ泣いちゃうんで。」

 泣くか!

「はっはっは。相変わらず勇斗は優愛ちゃんに頭が上がらないみたいだな。」

 昔はこのアーケード街は晃と俺、そして優愛の格好の遊び場だった。

 良くも悪くも・・・いや、ほとんど悪い意味で目立ってた俺等は、このアーケード街の大人たちにずいぶんと怒られたものだ。

「勇斗って、肉屋のおっちゃんにしょっちゅう怒られたよね〜。」

 優愛が口に手を当てて、ケラケラと楽しそうに笑う。

「ちょっと待て!怒られてたの俺だけじゃないぞ?晃や優愛だって怒られてただろ?」

 だいたい俺がイタズラを思いついて、嫌がりながらも晃がついてきて、おしゃまな優愛が「あっくんを巻き込まないで!」って騒ぎ立てるから、肉屋のオヤジに見つかって全員が怒られるってのがパターンだったはずだ。

「商店街の皆は首謀者は勇斗って分かってたから、晃と私はあんまり怒られてないよ。」

 なんてこった!

 一蓮托生だと思っていたのは俺だけだったのか?!

「それよりさぁ、日菜乃の件はどうすんの?」

「どうすんの?って聞かれてもなぁ。なかなかうまい方法ってないもんだぜ。」

 あの後、俺ら3人は教室でしばらく頭を悩ませたが、結局のところなんの案も出ずに解散に至っている。

「勇斗は行動力だけはあるからね。こういう時は頼りにしてるよ。」

 行動力「だけ」って・・・。

「晃は妙に優しいとこあるから、変なところでそういうの出そうだよね。」

 それ分かるわ〜。

 そういうのアイツの悪いところだ。

「そこが良いところではあるんだけどね。」

 良いんかい?!

「お楽しみのところ悪いんだけどよ。そこで立ち話されちゃ商売の邪魔だ。これやるからどっか行って話せ。」

 そう声をかけてきたのは、さっきから俺等に無言の圧をかけて続けていた肉屋のオヤジだ。

 あまりにも動く気配のない俺等にとうとう諦めたのか、コロッケで買収するという手に出たらしい。

「わぁ、良いんですか?ありがとうございます!」

 優愛が満面の笑みで、肉屋のオヤジにお礼を言った。

 しかし長い付き合いの俺は知っている。全ては優愛の掌の上なのだということを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る