第54話   幕間 〜 戸田美桜

 私たちを乗せた市営バスは海沿いの道を進み学校を通り過ぎると、灯台のある岬付近で右に曲がり、峠の道を登り始めた。

 ふたりがけの椅子の窓側に座った妹の咲希は、窓から差し込む日光が眩しいのか、先程から目を細めたり被ったキャップの位置を調整したりしている。

 ――妹とふたりで出かける。

 何でもないその行為が、私にとっては・・・いや、私達にとっては、とても困難で遠い道のりであったはずであるが、先日知り合ったばかりの後輩は私達の関係をいとも簡単に改善させてしまった。

 私は隣に座る咲希の表情を盗み見た。

 そういえば咲希は速水君のことをどう思っているのだろう?

 気難しい咲希があそこまで心を開く事は、そうそうある事ではない。

 どのような経緯で知り合ったのかは聞いていないけれど、少なくとも好意を寄せていることは確かだと思う。

「何?さっきからチラチラ見て。」

 おっと、いけない。少し見すぎていたようだ。

 咲希は怪訝そんな表情をしたが、私がとぼけているとつまらなそうに窓の外の景色に視線を移した。

 やはり姉としては、妹の恋を全力で応援してあげたい。

しかし速水君が咲希の事をどう思っているのかも重要なところだ。

 今回のバーベキューは、私たち姉妹の仲を取り持ってくれようとしてのお誘いだろうから、速水君の気持ちをはかることはできない。

 そうそう、咲希にとっての最大の障害は、以前速水君と一緒にいた、やけに綺麗な女の子ね。

 咲希も容姿的には負けてないと思うけれど、気の強いところがある咲希が男性ウケするかどうかは微妙なところ。

「だから、さっきから何?お姉ちゃん。」

「いや、咲希は今日も可愛いなって思って。」

「はぁ?からかってんの?」

 もうすぐキャンプ場に着く。

少し遅刻しちゃったから、速水君に到着のメッセージを送っておこう。

 何故だか少しだけ胸が痛い。

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