第52話   幕間 〜 木村大和

 空は嫌味なほど青く、透き通っていた。

「今頃、みんなで楽しくやってんのかなぁ。」

 俺は通学路を自転車で走りながら、灯台近くの峠に目をやった。

 肉眼では見ることはできないが、晃と勇斗、それに優愛、瑞希ちゃん、戸田先輩とその妹がバーベキューを始めている頃だ。

「雨でも降ってくんねぇかな。」

 自転車に乗りながら、一人呟いた。

「雨で部活が中止になれば、俺もバーベキューに混ざれんのになぁ。」

 出かける前に見た天気予報では「本日の降水確率は0パーセント、雲ひとつない晴天になるでしょう」と言っていた。

 いつもだったら可愛いと思えるお天気お姉さんの満面の笑みが、今日は無性に恨めしかった。

「雨が降ったら、バーベキューも中止でしょ?」

「うわっ!」

 突然後から聞こえてきた声に、俺は間抜けな声を上げてしまう。

「何だ日菜乃か。いつから後ろにいたんだ?心臓に悪いから、びっくりさせないでくれよ。」

「う〜ん、「今頃、みんなで・・・」あたりからかな?」

 日菜乃が顎に左手の人差し指を当てて、首を傾げてみせた。

「それって最初からじゃん。恥ずかしいから、そういう時は話しかけてくれ。」

「ふふっ、大和君の照れた顔ってちょっと可愛いよね。」

 日菜乃が楽しそうに笑う。

 物静かで聞き役に回ることが多い日菜乃が、声を出して笑うことは少ない。この笑顔を見ることができただけで、単純な俺は今日が部活の日で良かったと思った。

 俺達が通っている高校は部活の強豪校ではないため、祝日まで活動しているのは野球部とサッカー部、それと陸上部ぐらいだ。

 更に言うと、野球部だけは暗くなるまで練習をしているが、サッカー部と陸上部は午後3時ぐらいには解散していることが多い。

「なぁ、日菜乃・・・。」

 みんなが遊んでいる時に部活だけっていうのも何だが虚しく思えて、俺は日菜乃に声をかけた。

「陸上部も、どうせ3時には終わるんだろ?」

 最近は買い食いをしていないから、ファーストフードでハンバーガーを食べたい気分だ。

「部活のあとなんだけどさ。」

 ショッピングやゲーセンに行くのも良いだろう。

「ふたりでさぁ・・・。」

 ・・・ふたりで?

 俺は何を言おうとしたんだ?

 日菜乃と俺はそんな関係じゃないだろ?

 そう思い直して、俺は言葉を噤んだ。

 しかし「どんな関係なんだ?」と聞かれたら、返答に困る自分がいる。

 友達で、クラスメイトで、一緒にいる事が多くて・・・。

 でも、それだけじゃない・・・気もする。

「大和君、どうしたの?」

 横を走る日菜乃が顔を覗き込んできた。

「いや、何でもない。今日も部活頑張ろうな。」

 日菜乃は怪訝な顔を字だけど、それ以上は何も聞いてこなかった。


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