第50話   幕間 〜 一ノ瀬瑞希

 お弁当を食べ、午後の授業を終えても私のモヤモヤした気もちは治まらなかった。

 自分で言うのも何だが、私は細かいことがいつまでも気になってしまい、色々な事が手につかなくなるタイプの人間だ。

 今回のモヤモヤの原因は分かっている。

 昨晩、晃君がどこに行って、何をしていたのかが気になって仕方がないのだ。

 恋人ではない私が、そんな事を気にする必要もないし、そんな資格がないのも分かっている。

 でも気になっちゃうんだから、しょうがないじゃない!

 私は頭の中で悪態をついた。

「瑞希ちゃん、私は部活に行くね。」

「う、うん。日菜乃ちゃん頑張ってね。」

 教室の前側の出入り口には、大和君の姿が見える。きっと日菜乃ちゃんを待っているのだろう。

 いいなぁ、二人は仲が良くて。

 あれで付き合っていないというのだから驚きだ。

「すっとぼけてんじゃねぇぞ!こっちには目撃者もいるんだよ。」

 私のすぐ後ろの席で、さっきからふざけあっているのは、私の想い人とその他1名。

 はぁ、何でこんな人を好きになっちゃったんだろう。

 見た目は凡庸。成績はクラスの真ん中。運動神経は良いらしいけど、そんな姿は見たことがない。

 そして超が付くほど鈍感。

 まあ、良いところもあるんだけどね。

「ねぇ、ふたりとも何やってるの?」

 年甲斐もなく、刑事ごっこで盛り上がっているのを見ているのも飽きてきたので、とりあえず声をかけてみた。

「晃が俺らに黙って、可愛い後輩と仲良くなってんだよ。許せなくない?」

 それで昨日の夜に急いででかけて行ったのか。

 晃君は不思議と女子に人気がある。優しそうな雰囲気とか、気さくな性格とか、理由は何となく分かるけど、想いを寄せている私としては心配事に尽きない。

「話は変わるけど、瑞希ちゃんはゴールデンウィークって暇?」

「え?特に用事はないけど、何で?」

 勇斗君の話題は突然飛ぶことがあるため、たまに話題についていけない時がある。

「実は晃と優愛を誘ってバーベキューでもしようかと思ってるんだけど、瑞希ちゃんもどうかな?」

 バーベキューは行きたいけど・・・優愛ちゃん・・・か。

 仲良くしたい気持ちはあるけど、何となく優愛ちゃんに歓迎されていない雰囲気があるんだよね。

「やめとく。ゴールデンウィークはゆっくりしたいし。」

 イベント事に割り込んで、3人の仲をおかしくしちゃったら大変なので、残念だけど今回のバーベキューの参加は止めることにした。

 せっかく誘ってくれたのにゴメンね。

 しかし次の言葉を聞いた瞬間に、勇斗君に対する謝罪の気持ちは私の中から吹き飛んだ。

「さっきの咲希ちゃんを誘えば良いんだよ!」

 突然、何を言い出すの勇斗君?!

「だってそうだろ?咲希ちゃんが来れば、もしかしたら美桜先輩も来るかもしれない。」

 いやいやいやいや、それ妙案でも何でもないですから!

 晃君も満更でもないって顔しないのっ!というか何で早速メッセージ送ろうとしてんの?!

「ちょっと待って勇斗君、やっぱり私もバーベキューに行くわ。」

 優愛ちゃんには悪いけど、このイベントを欠席するわけにはいかないわ。

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