第37話   幕間 〜 渡辺日菜乃

 帰りのホームルームも終わり、教室内はざわめきだっていた。

 部活の準備をしている人、仲のいいグループでお喋りをしている人、黙々と帰り支度をする人など様々だ。

 放課後に部活のある私は、ロッカーからスポーツバッグを取り出して、中身の確認をしている最中だ。

 陸上部にも新入生が入り、私も先輩になった。

 新入生はまだ基本メニューしかやっていないので、高飛び希望の子がいるかどうかは分からないが、いまから一緒に練習する日が待ち遠しい。

「勇斗、晃は帰ってきたか?」

 大和と勇斗君が話している声が聞こえてきた。

「あいつ、ゴミ捨てに何十分かかってんだ?」

 どうやら、ゴミ捨てじゃんけんに負けた晃君が帰ってこないらしい。

 掃除が終わってから、もう30分以上経っている。

 中庭の先にあるゴミ捨て場所は、この教室からは少し遠いところにあるが、30分はさすがに遅すぎる。

「帰っちゃったんじゃねぇの?」

「鞄を置いてか?」

 大和が晃君の鞄を持って、勇斗君に見せた。

「俺、そろそろ部活行かなきゃなんないから、晃が帰ってきたら、ご苦労さんって言っといて。」

 大和の属するサッカー部も、陸上部と同様に毎日部活がある。

「いやいや、俺も帰るって。」

 急いで帰り支度を始める勇斗君。

「瑞希ちゃんは帰らないの?」

 帰り支度はすっかり終わっているように見えるが、一向に席を立つ様子のない瑞希ちゃんに私は声をかけた。

「もうちょっと教室にいる。やる事あるし。」

 やる事って何だろう?

「日菜乃、部活だろ?一緒に行こうぜ。」

 スポーツバッグを肩にかけた大和が、私を呼ぶ。

 グランド横のクラブ棟まで一緒に行くのが日課となっているのだ。

「ちょっと待って、すぐ行く。」

 私はバッグのポケットからヘアゴムを取り出して、サイドポニーテールを作り大和を追った。

「じゃあね、瑞希ちゃん。また明日。」

「うん、また明日。」

 小さく手を振る瑞希ちゃんが、少し寂しそうに見えた。

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