第33話 幕間 〜 戸田美桜
ピピッ、ピピッ、ピピッ。
控えめな音で鳴るスマホのアラームを止め、私はベッドの縁に座り、大きく伸びをした。
背骨がポキポキと軽い音をたてる。変な姿勢で寝てしまったのか、右の肩甲骨付近が少し痛い。
昨日は遅くまで勉強をしていたので、少し寝不足だ。
勉強机の上に、数学の参考書が開きっぱなしになっているのが目に入った。
「昨日は片付けないで寝ちゃったんだっけ。」
私はゆっくりと立ち上がると、参考書を閉じて机の端に重ねた。
パジャのまま自分の部屋を出て、廊下を歩く。
私の隣りに位置する咲希の部屋からは、人が動くような物音はしない。きっと咲希はまだ寝ているのだろう。
「咲希、そろそろ起きないと遅刻するよ。」
咲希の部屋を軽くノックをして声をかけたが、中から反応はない。
私はもう少し大きな声を出すために、息を吸い込んで・・・そして、声をかけるのをやめた。
最近、咲希とは少し不協和音だ。
「前はあんなに仲が良かったのに。」
小さく呟いてから、私は朝食を摂る為に一階に降りた。
「美桜、おはよう。咲希は?」
お母さんが私に声をかけてきた。
「おはよう。咲希はまだ寝てるみたい。」
「しょうがないわね、あの子は。」
今日の朝食は、トーストと卵焼き、そしてカップスープだ。
「いただきます。」
野菜不足を補うため、私は冷蔵庫からパックの野菜ジュースを取り出して朝食に添えた。
リビングのテレビに映っている朝のニュースの天気予報では、今日の天気は快晴、午後からはかなり暖かくなるらしい。
「ヤバい!寝坊した。」
私がちょうど朝食を食べ終わる頃、騒がしい音を立てながら咲希が階段を駆け下りてきた。
「咲希、もう高校生なんだから、お姉ちゃんを見習ってちゃんと起きてきなさい。」
「分かってるよ!間に合わないから、朝ごはんはいらないから。」
乱暴に言い放ち、朝の準備をする咲希。
「朝ごはんを食べないと、頭が働かないよ。」
私も咲希に声をかけるが、こちらを一瞥しただけで無視されてしまった。
はぁ、いつからこんな関係になっちゃったんだろう。
忙しなく朝の準備をする咲希を横目に、私は食器を片付け、制服に着替えるために自分の部屋へと戻った。
「行ってきます!」
玄関を出る咲希の声が聞こえてきた。
私もそろそろ出発しないと遅刻する。
憂鬱な気分を払拭するために私は腹式呼吸を2度行い、制服のブレザーに袖を通した。
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