第20話 幕間 〜 戸田咲希
品行方正。
成績優良。
容姿端麗。
素直で優しく誰にでも好かれる性格。
――あぁ、イライラする。
戸田美桜。
私の実の姉であり、大嫌いな女。
同じ高校に進学してしまった自分の軽率さを、今になって恨んでいる。
「咲希、ちょっとスカート短いんじゃない?髪も明るすぎるし。」
昼休み、お姉ちゃんはたまたま廊下で会っただけの私に細かく注意してくる。
「うるさいな。私の勝手でしょ?」
早歩きで廊下を進む私についてくる姉。
「もう部活は決めた?咲希は足が速いから陸上部とかいいんじゃない?」
はぁ?陸上部?
運動部とかマジ無いわ。
遊ぶ時間が無くなるじゃん。
「お姉ちゃん、どこまで付いてくるわけ?私、トイレに行くんだけど。」
姉を追い払うために、私は行きたくもないトイレに入る。
「ゴメンゴメン。また後でね。」
私は心の中で「もう来んな」と悪態をつき、個室の扉を閉めた。
たかだか2年早く生まれてきただけなのに、昔から姉は事あるごとにお姉ちゃん面をしてくる。
傍から見たら微笑ましい光景なのかもしれないが、いつも注意されている方からしたら「いい加減にしてくれ」と言うのが本音だ。
おかげで私はいつも優秀な姉の引き立て役。
――お姉ちゃんは可愛い。
――お姉ちゃんは頭が良い。
――お姉ちゃんはいい子だ。
――お姉ちゃんは、お姉ちゃんは、お姉ちゃんは・・・。
もう、うんざり。
その反発心から髪を染め、制服を着崩し、余計に悪態をついた。
自分でも子供っぽい事をしているとは思う。
でも仕方がない。
それ以外に抗う術を知らないのだから。
私はお姉ちゃんがいなくなったのを見計らって、個室から出た。
余計な時間を食った。早く学食に行って昼食を摂り、姉に合う可能性の無い教室に戻ろう。
「・・・だいたい晃には美桜先輩っていう憧れの人がいるんだから。」
美桜先輩?
思いがけず自分の姉の名前が聞こえてきたことに驚き、私は先輩達の会話に耳を澄ませた。
会話の内容から推測すると2年生か。
「1年間眺めてるだけの腰抜けには、少しぐらい荒療治が必要なんだよ。」
仲良さそうな3人組の先輩のうちのひとりが、どうやらお姉ちゃんに憧れているが、話しかけることもできていないらしい。
ふ〜ん。
なかなか面白そうな会話を聞いた。
顔と名前ぐらいは覚えておいても、損はないかもしれない。
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