第12話   幕間 〜 木村大和

 ホームルームが始まるまで、あと30分はある。

 俺は黒板に貼り出された席順を確認して、真ん中の一番後ろの席に鞄を置いた。

「大和君、一緒のクラスだね。よろしくー。」

 えーと、誰だったかな?

「1年間、よろしくね。」

 とりあえず話を合わせておいた。あとで名前を確認しておこう。

 まだ晃も日菜乃の来ていない。勇斗は・・・来ているわけ無いか。

 もっとギリギリに来るんだったと後悔した。

「大和君、おはよー。」

 えっと、この子は確か・・・西原さん?

「おはよう、西原さん。今年は一緒のクラスだね。」

 俺は人の名前を覚えるのが苦手だ。皆、よく別のクラスの人の名前まで覚えていると感心する。

「大和君、おはよう。」

 またか。

 頼むからあまり話しかけないでくれ。

「何やってるの?」

 頭を抱えた俺にそう言ったのは、聞き慣れた声だった。

「日菜乃。やっと来てくれたか。」

 僕の目の前に立っていたのは、渡辺日菜乃。1年のときに仲の良かったグループのひとりだ。

 日菜乃は斜め前の机に自分の鞄を置き、椅子を反転させ、こちらを向いて座った。

「また名前と顔が一致しなかったの?しばらく見てたけど、迷子の子犬みたいで可愛かったよ。」

 しばらく見てたのか?!

 クスクスと楽しそうにそう言う日菜乃は、男女ともに人気がある。柔らかい態度で誰とでも仲良くなれる所は、俺も見習わなければならないと思う。

「誰が誰だか分からなくて・・・間違ったら失礼だし。皆、よく別のクラスの人の名前なんか覚えてるよ。」

「大和君らしい。でもちよっと覚えなさ過ぎかもね。」

 そうこうしているうちに教室の前の扉が開き、見知った顔が入ってきた。晃と勇斗だ。

「晃、勇斗、おはよう。また一緒のクラスだな。」

 右手を軽く上げ、ふたりに挨拶をする。

 その様子を見て、隣で日菜乃が吹き出した。

「何だよ。」

「別に。さっきまでとは随分と態度が違うんだなと思って。」

 日菜乃はそう言って、ふたりに挨拶をした。

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