第6話 幕間 〜 佐々木優愛
日当たりの良い窓際は、お日様の匂いがする。
ポカポカと優しい日差しが降り注ぐこの季節は、丘の上に建っているこの家の窓際が私のお気に入りの場所だ。
「ゆうちゃ〜ん、どこ〜?」
私の名前は優愛。『ゆう』じゃない。
何回言っても、あっくんのお母さんは私を『ゆうちゃん』と呼ぶ。
今日こそは返事してあげないんだから。
私は窓際で寝たフリをすることにした。
「ゆうちゃん?あ、ここに居たんだ。」
ふん。優愛って呼ぶまで、起きてあげないんだから。
「寝ちゃったのかな?」
ホントは寝てませんよ〜。
「ホントに寝てるのかな〜?」
私は寝たフリがばれない様に、ギュッと目を瞑った。
あっくんのお母さんが、私の顔を覗き込んでいることが分かる。
起きてない、起きてない、私は起きてない。
プニッ。
な、何?
私が必死に寝たフリをしていたら、ほっぺたに指先の感触が・・・。
「やだ〜、女の子のほっぺってプニプニ〜。」
プニッ、プニッ。
ちょっと、やめてよ・・・くすぐったいよ。
ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに・・・。
「きゃー。ずっとプニプニしてたい。」
そんな事してもだめ!『優愛』って呼ぶまで、何されても起きないって決めたのっ!
私は頑なに目を閉じる。
「ゆうちゃん起きないか〜。」
『優愛』って読んだら起きるよ。
「しょうがないな。」
あっくんのお母さんが、立ち上がる気配がした。
この勝負、私の勝ちね。
「ゆうちゃんの好きなアップルパイは晃とふたりで食べちゃおうっと。」
「だ、だめー!優愛も食べる!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます