雲の味

「うわあ!」


 ゾラの歓声が響き渡った。ジャスパーの吐き出す息の勢いで彼らはあっという間に雲を突き抜けた。その切れ間から無数の小さな光が見える。


「あれはホタル?」


「とんでもない。あれはウタカタンの街の灯りだよ」


 ジャスパーはせせら笑った。


「それより、せっかく雲の上にいるんだ。どうして味見しないんだい?」


「雲って食べられるの?」


 ゾラがためしに雲をすくって舐めてみる。


「ほんのり甘くて美味しい!」


「この辺りの雲は人参味さ」


「嘘だ! だって嫌いなのに美味しいよ」


「じゃあ、いつかは人参を美味しいと思うんだろうさ」


「そんなのおかしいよ。だって嫌いなのに」


「人生はおかしいことばっかりなのさ」


 ジャスパーはケラケラと笑い、もっと高く飛んで行った。

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