2.お薬要らず

バッグの中にかくれんぼ

レシートに薔薇色のよろこびを見つけたよ

ポイントカードを掴まえて、薬用ドロップス大量に買う

喉の痛みを感じたら、すぐに食べられるようにね

巨大な缶詰を乗せた列車が木琴の線路をかき鳴らしたら

接着剤で貼りついたようなしつこい記憶も飛んでゆけ

霧の夜を映す映写機のゆううつも飛んでゆくよ

押入の中から、傘を差した壺の中からも

小さな包装の切れ端さえ見つからない日には

しかたないから屋根をとんとん雨滴が叩くころに

ガラリと窓を開けてしまおう

(庭先で驚く竜胆)

帽子掛けの陰に隠れながら近所の木々にこんばんわ

すーは、すーは、と、108の深呼吸をするんだよ

森から届いたエーテルを受け取って

傷ついた喉のざらつきは幸運にも快調になるはず

それでもだめならお宅の棚の奥から

とっておきのマヌカハニーを二匙いただけば

なによりの薬であります


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