第一回 紅葉杯 誉め殺し大会
中也「…というわけで、集まってもらったんだが」
立原「いや、その前にですね…」
芥川「出血が…」
広津「浅くではありますが…切られてますよ?」
中也「褒めるどころか、NGワードを言うと、こうなる(額から血)」
一同「わぉ。。。」
中也「事の成り行きはこうだ。
紅葉の姐さんお気に入りの漫画『煙と蜜』の良さをわからぬとはポートマフィア以前に人間として欠落している。心が
…まぁなんだ
『そんなだから異能の名前が《汚れっちまった悲しみに》なのか?』
とまで言われてな」
一同「(…この人にそんな事言ったの?…ガクブル)」
中也「参考文献であるこの漫画を熟読し、汚れた心を浄化させた上で、真の愛情と崇高なる精神を持って相手を思いやる清らかさを学べ。との命令が下された。
いいか?
これ、五大幹部の一翼から出た
『命令』だからな?
…ったく、怒らせると(出血している額を指さしながら)こーだぜ?
やっぱ姐さんこえぇわ。
そーゆーわけで
立原「…っつってもですね。三十男と幼女とじゃ、ただの犯罪じ…」
金色夜叉っ!
立原「はぅわっ!!!(体中から鮮血が飛び出す図)」
中也「…立原、いいデモンストレーションだ。
今回の金色夜叉は、ガキ使で言うところの『アウトー』のバット隊だ」
芥川「…し、止血ぐらい許されても(ガクブル)」
中也「浅くしか切ってないんだから我慢しろ。だそうだ
(まだ額の出血が止まらない)」
広津「さすが…拷問専門班を有するマフィア幹部殿。やることが違いますな」
中也「…ってか。誉めるっつっても、絵が細かくてきれいですね。とか、そのぐらいしか言えねぇんだよなぁ。…尊いとか言われてもなんのことだかピンとこねぇっていうか…(白いハンカチで取り合えず血を拭ってみる)」
立原「ですよねぇ。…まぁ、普通の少女漫画とはちょっと雰囲気違いますね。ぐらいしか(中也からもらった白いタオルで取り合えず顔の血を拭いてみる)」
広津「こほん。…では、私から一つ」
中也「おぉっ?期待してるぜ!広津っ!
(痛ってぇな、やっぱ。といいながら額の傷口にハンカチを当てている)」
広津「大正5年を舞台としているようですが、非常に時代考証を綿密にされているとお見受けいたしました。中心人物である少女は良家のご令嬢ということですが、お屋敷内外の大正時代に違わぬ描写が素晴らしいですな。ご令嬢のお召し物一つとっても、作者のこだわりがあるようで、同じ着物を別日には着ていないという…作画が大変なはずですが、そこを描くこと自体に楽しみを見出されておられるのかもしれませんな。感服いたします。
そしてもう一人の中心人物である軍人に関してですが、帝国陸軍第三師団歩兵第六連隊というのは、実在した部隊でございます。これもまた時代考証の綿密さがなせる
中也「(こそっ)やっぱ、じいさんは目の付け所がいいな」
立原「(ぼそっ)別の角度から誉めちぎる。さすがっ!」
広津「軍服の描写ですな。非常に細かく描き切っておられるところにマニアックさを感じ入りますな。何しろ着替えのシーンだけで見開き数ページを使うこだわりよう。そしてこの、軍人の出で立ち。
芥川「(…?)」
広津「加藤…」
金色夜叉っ!
立原「…え?なんでっ?え?めっちゃほめてたぢゃんっ?ってかっ、じいさん大丈夫かっ?」
広津「(ぷしゅぅ~。。。)」
中也「広津…何、言おうとしたんだ?」
芥川「(指先で額をおさえながら)確かに、帝都物語も明治末期から話が始まりますから、時代設定自体に
広津「まだ似てるって言ってな…」
シュババッ!
立原「じいさんっ!いいからもーしゃべんなっ!しゃべっちゃだめっ!(泣)」
中也「(両手で頭抱えて)なんで欲しがったんだよ、広津。
わかんだろ?なぁ?
わざとぢゃねーか、それ」
芥川「では、
中也「お、…おう。頼んだ…」
芥川「残念ながら
中也「(…くぁ~。この流れ…全滅か?)」
芥川「しかしながら、ここに出てくる少女の純真さと節度ある愛情表現。そして自らを律し、お相手の軍人に相応しい女性となるべく精進する姿勢に感銘をうけました。なんという清らかな精神かと」
立原「(おぉ?芥川さん、いいカンジにもってきたぁ~)」
芥川「つきましては、こちらの作品をぜひ、
ぜひとも樋口に、樋口に熟読させ、
こちらの少女のように少しでも落ち着いて欲しいと…」
一同「おぉ~(パチパチパチパチ)」
芥川「切に願うばかりです。
なお、妹の銀にも読ませてみたところ、
銀いわく、
許されるならば、尾崎幹部とぜひ
この作品について語り合いたい。
との
しゅっ。。。
中也「…金色夜叉が消えた」
立原「か、…解放、されました?」
広津「…かとう、も、幼女を連れていったりしてた。。。」
中也「広津。手前、死にたいんだな?」
立原「芥川さんっ!さすがっす!」
芥川「…すべて、銀の入れ知恵」
中也「手前んとこの妹、有能だな…なんかおごってやるわ、今度」
芥川「…と、いうか」
中也「へ?」
芥川「…アレを読ませてから、『尊い』としか言わなくなりまして」
中也「…ぁー、、、」
芥川「…元々、樋口より女子要素強めなので。はい。」
中也「下手な異能より
一同、頭を抱えて深いため息をつく。
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