今日の女神の一言「自己責任でしょ?」

 はぁい、みんな元気? 女神よ。


 正直、この仕事ってもっと上の神から与えられた使命で、任務で、ぶっちゃけちゃうと転生者と世界と神に挟まれてる中間管理職なのよ。


 けど、それなりに人間を扱うのだから、ちゃ~んと、人間の勉強もしてるわけ。


 でもねぇ、女神にだって、あーあ、面倒になっちゃったわねぇって思う事もあって、今回はそのお話。


「どうしてあんな奴らに能力ちからを与えたんですか!!」

「彼らが望んだ物を、望んだままに与えただけです」


 こうして叫んでるのは、過去に転移させた勇者の1人、んーと、この子の体感時間で10年ぐらい前だったかしら。


 そして、この子がこうして直談判をしているのは、この子と一緒に転移させた学友のが大暴れしてるから。


「なんで選んだんですか!?」

「選ばれたのはあのクラス全員をです、彼等だけ除外する事はありません」


『別にあの時は選んでないのよ』なんて言うともっと怒りそうよねぇ、転生者とか転移するのなんて、選んでるパターンもあるけれど、この子達は偶然欲しいタイミングで死んだ人間だったってだけなのよね、学友の1クラス丸ごと隕石で死んで。


「そのせいで、世界がめちゃくちゃになったんだぞ!」

「何を成すかは、選ばれた者次第ですそれが悪行だち貴方が断じるものであっても」

「だからって、女神があんな邪悪な願い……!」

「邪悪ねぇ、人間の倫理観って難しいわ、なんであの願いが邪悪になるのかしら」

「邪悪でしかないだろ……あんな!!」


 基本的に能力というのは、移動先の世界がこの能力があっても不自然ではないか、大丈夫か、その世界の管理者が許可を出すかで決められてて、今回そのめちゃくちゃにしたって子が望んだのも、普通に世界が問題ないって認めた物なのに。


「あんな、見た女性を虜にして性行為エッチをするだけの能力なんて!!」

「……なぜ、それが邪悪なのですか、子作りの願いでしょう?」


 私があの子達に与えたのは子作りの能力。それで四方八方で子供を作りまくって、女性を囲んで大変らしい。


「人口は増えた様ですが……?」

「同じ人間の子じゃないか!!」

 ソレの何がいけないか、ちょっとよくわからない。


「子作りの願いは邪悪なのですか?」

「あぁ、そうに決まってる!」

「ですが……貴方の元いた世界でも、転移先の世界でも、子作りを神に祈願する施設は沢山あるようなのですが……」

「それとこれは違うだろ!?」


 ここが良くわからないのよねぇ。


「いつも子作りを願われてますし、個人ではなくとも、国という大きなコミュニティ、権力を持った者、小さな集落でも子孫繁栄は喜ばしいものとして願っているではありませんか」


「……っ、1人が独占するのはおかしいだろ!」

「どちらの世界でも、王や、権力者が大人数をめとるのは普通ではありませんか」


「貴方の慕う王の中にも、めかけを作っているものはいるのでしょう?」

「それとこれとは……」

「なぜ、同じことであるのに自分達は良くて相手がしたら悪なのか」


 あら、勇者ちゃん黙っちゃったわね。でも私からしたらやってることは同じよ?


「王の妾も人間の合意も、王から要請してるから強制でしょう、あなた達人間の法律でソレを是としていますし……あれかしら、規模が多いとダメなのですか、しかし何人からダメなのか、はっきりと言えもしないのでしょう?」


 うーん、言い過ぎちゃったかしら、正直、事務的に対応してはいるけど、この人間もどうしようもなくなって女神に縋るほど切羽詰ってはいるのでしょうねぇ、イマイチどういうレベルで人間社会がヤバくなってるか説明できないだけで。


 困ったわよね、こういう時人間側にちゃーんと数字として倫理観メーターみたいな、数値化だとかなんでもいいけど、わかりやすい指標があればいいのだけど。


「まあ良いわ、それで結局どうして欲しいわけ?」

「……え」


「私からの神託を直接聞きに来たのですよね、それなりの代償を払って」

「……はい、数え切れぬ程の犠牲を捧げました」

「その代償には神として報いましょう」


「自己責任でしょ、貴方達の……と言いたいところですがね」

 とりあえず、無理な願いを言わないように釘を刺しつつ話は聞く。


 ま、こんだけ言っておけば無理難題をリクエストしてこないでしょう。


 それに対価を払ってるー……とか言われても、勝手に捧げられて願いを叶えろって言われてるようなものだし……ね?


「俺達の願いは……あの暴れてる者達が支配する現状を、解決して欲しい」

「具体的にはどうしたら? 殺して? 封印して? あぁ、能力の剥奪もダメよ」

「殺人も封印もダメで……なんとかする方法を求めろと……?」

「そうなりますね」

「無茶だ……!」


 うーん、文句言われそうだし、説明しとこうかな。


「まず、殺人は呪いと変わりません、それをしてもいいという神、天罰として行使する神もいますが、私の管轄外です」


 できなくもないんだけど、ちょっと与えられた役目から逸脱しちゃうのよね~。


「殺人は神官達にも言われておりました……ですが封印は何故!」

「これは経験からなのですが、問題を先延ばしにするだけで、後世でその封印を経験したことにより、更に酷い結果を押し付ける結末にしかなりかねないのです」


 それに、ただの人間を封印するのもなんか……ねぇ。


「じゃあいったいどうすれば……!」

 多分彼は封印してもらえる前提で話してたんだろうなぁ可哀想に、ほら頑張りなさいそのどん底の状態からひねり出すアイデアに光るものがあるのよ。


「むしろ女神様には何ができるんでしょうか?」

「私は『与えること』そして『転移させること』基本的にはこの権能の女神」


 本当は他のこともできなくはないんだけど、上司命令でも、転移先の世界への過介入を防ぐ目的でも禁止されてるのよねぇ。今回はその世界の住人からすがってきてるから、不承不承ふしょうぶしょうながらも対応できるけど。


「転移……ならば、今騒がせてる人間達を合わせたらどうなるのでしょうか?」

「しばし考えます」


 そう、今回騒がせている人物は、ハーレム願望を持った男女2人、同じ願いを、男女入れ替えた状態で願ったので、対象が違うから別の願いだという理由で与えた。


『絶対に男を魅了する能力』

『絶対に女を魅了する能力』


 この2つの勢力がそれぞれの大陸を支配して、世界を制圧しようとしている状況。


「そんな、危険では、2人が協力すればこの世界は……!」

「しないと思うわよ、経験談だけど」

「女神様……?」

「人間の欲ってのは、そんなもんよ」


 勇者くんが首をかしげてるけど、決めたしさっさと仕事を終わらしましょっと。


「両者の座標確認、場所は……どこでもいいわねぇ、じゃ人気がないけど国境で」

「あの……女神様?」


「一応生き残ったら帰れるのは楽な場所で……でも人里に近いとこ……んー、難しいわねぇ、そうだ、たまたま人が少ない街道にでもして、あの世界にないけど自転車でもサービスしとけば良いでしょ」


「これで、よし、とりあえず2人が出会ってからは、若気の至り極まる2人に次第」

「……本当に、大丈夫なんですか」

「ま、2人の出方次第でしょう、マトモな倫理観、ってのがあるなら生き残るわよ」

「それじゃあ……!」

 んー、面倒よねぇもうこっちの作業も終わったのに、いいや、帰しちゃお。


「あー、はいはい、じゃあ送り返すわよ、もう」

「待ってください女神!?」

「解決しなかったら叫びなさい、じゃあね」


 光とともに、勇者くんを元いた場所へと帰した。

「あーもう、疲れたわー、さて、次の仕事ね」



 ―――さて、この続きだけど。



 結論から言うと、迷惑を振りまいていた性欲の2人は死ななかった。

 けれど、彼と彼女がそれ以上、ハーレムを増やすこともなく、支配もとけていった。


 そして、彼等がいる場所は禁域に指定された、

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