今日の女神の一言「でぃすとぴあー」

 はぁい、みんな元気? 女神よ。

 突然だけど、ディストピアって知ってる?

 悪いとか、困難とかって言葉と場所って言葉を組み合わせた言葉で、反ユートピアか暗黒郷だとか地獄郷トカ言われてる、まあざっくり言っちゃえば発展したけど滅んじゃった失敗文明だったり、機械に支配されちゃったみたいな感じだと思ってくれればいいわよ、他にも色々種類があるけど。


 なんでこんな話をしたかって言うと今回はそんなディストピアのお話。


「あら…珍しいわね」

 今日も今日とて雑に殺して生まれ変わらせていたら、あまり見覚えのないタイプの依頼がきた、それがディストピア、私の受け持つ中だとディストピアでの転生というのは結構珍しいのよね。

「どういう経緯なのかしら?」

 私はあまり転生後の世界に深入りはしないし、介入もしたくもない。

「にしても…うーん」

 気になる事は気になるし、勝手に殺して他の世界に持っていくあたり、多少責任は感じたりもする、不幸になろうが幸せになろうが知ったことではないけど、余りにも捨て鉢にされるのも気分が悪いのよ、なにより転生前の世界の神にも失礼。


「たまには聞いてみるか」

 こうしてナイ依頼に久しぶり他の神に直接コンタクトを取ることになった、相手の名前はハース、元の世界ではと呼ばれていた存在だ。

「こんにちは、ハースさん」

「ど、どうもお疲れ様です」

 ん? 思ったより力のある神が出てきたわね

「すいません、ちょっと今回気になったんでどういった経緯でしょうか?」

 私だって、ナイじゃなければ他の神には経緯は払うわよ? 相手は選ぶけど。


「えっと、ボク破壊神でして」

「そのようですね」

 えぇ、見たらわかるわよ、背景が凄い勢いで渦巻いているわね。

「でも、世界管理をどういうわけかナイから任されちゃって、頑張っては見たんです」

「あー、ナイかー」

「ナイになんかあるんですか?」

「いえ、コッチのことです、続けて」

 もうナイってだけで嫌な予感しかしないけど聞いてみるわ。

「それで結構ほっといても成長してくれて、少し試練を与えたり、破壊神なりに頑張って助けてみたりしてたんです」

 破壊神なりに頑張っての部分に嫌な意味しかなさそうだけど、今回と関係無さそうな気もするしスルーするわ。


「で、結構崇められちゃって、調子乗ってたんです」

 んー、崇められちゃっての方向が多分食い違ってる気がするー。

「それでボクを召喚しようとしてる儀式見つけちゃって…出てみたら」

「あっ…」

 あー、うん、破壊神の御本体のまま権限しちゃったらもー大惨事でしょうね。

「何故か、世界が滅びちゃったんです」

「何故かじゃなくない!?」

 おっと、思わずツッコんでしまったわ。

「あ、やっぱりボクのせい…ですか?」

「えぇ、おそらく」

 恐らくどころか100%よ、もう疑う余地なく100%、ショックで暴れられたら困るから濁すけど確信しかないわよ。

「そうですか…そんな、出現みただけで…」

 うん、その出現してみたってのが大問題だと思うわよ、あなたの身体じゃ。

「ちなみに、出現したら何が起こったか覚えては?」

「えーっと、まず小さい島だったんですけど、ソコに出て見たら、島を中心にして周りの大陸がピンポールみたいに動いていって、ちょっと綺麗でした」

 わー、それ綺麗ですましちゃいけない天変地異だー。

「で、色々なものがボクの出現を喜んでくれてるかのように舞ってて嬉しくなって」

 あー、それ建物とか建造物とか、植物とか山の残骸なのよー、あなたとかとかそのものなんだから。

「で、嬉しくなって一曲歌ってみたら、周りは海だけで、大地が殆ど砂漠になってました…大陸も一個だけになっちゃったし」

「えー、なるほど、事情は大体わかりました」

 過酷過ぎる! 大陸を反対側に移動させて一個にしてんじゃないわよ!? 

「なかなかスケールの大きいお話で感服しますね」

「ですか? えへへ、嬉しいです」

 褒めてない! ぜっんぜん褒めてないのよ!?


「ただやはり、生身の権限が問題でしたようなので、さぞ悲しいかと心中お察ししますわ」

 ヤダこの仕事拒否りたい、でも拒否って泣きついて私の家に来たら私の家こわれる。

「それで、どうして今回ご依頼を?」

「ボク、破壊神なので壊すのは得意ですけど、転生とか想像系の神秘は一切使えなくて、再建もどうしていいかわからないんです」

「はあ、なるほど?」

 むしろここから再建を考える神様って要るのね、もうあの世界滅んでるわよ?

「一応ギリギリ生き残った人類はいるので、チャンスは有ると思うんです」

 生きてるの!? 逞しいわね人類! ちょっと見直したわ。

「ただ、やっぱり薄々ボクのせいもあると思って手伝ってあげたいけど、ボクが行ったらまた壊しちゃいますよね?」

「そうなると思いますよ」

 そこは間違いなく今度こそ世界は死滅するわ、なんなら今現在暴力とセックスと荒れた大地で旧文明の遺産と少ない食料を巡る滅亡一直線の戦い的なのが起こってると思うわよ。

「あ! でも生き残った人類は結構元気ですよ! バイク乗り回したりして」

「うーん、なるほど」

 なんか、テンプレ通りのディストピアが想像ついたわ。


「それで、手助けするにはどうしたら良いか、ナイに相談したら紹介されて」

「なるほど、ナイの召喚ですかー後でぶん殴っておきますね」

「え? どうしてですか?」

「色々私の方の事情ですのでお気になさらずに」

「わ、わかりました」

 よし、この仕事終わったらぶん殴るわ、まっすぐ向かって超・女神ビンタよ。

「では、どういう相手をご希望でしょうか」

「はい、とにかく文明を再建し始めて欲しいので、肉体派の知識人です」

 簡単に言うけど、それ天然物を用意するのかなーり難しいのよ?

「そうですね、では知識人を、若返らせたり肉体を強化させるのでも良いでしょうか?」

「あ、それでお願いします」

 うん、この子素直なのが救いね。

「それでチート能力も危機察知能力と、毒体制など生存力に重点を置くプランが良いかと思うのですが」

「なるほど!」

「それで、できるだけ人が多いけど、争いが少ない場所にしましょう」

 ぶっちゃけ、ここまで私が色々用意するなんて滅多にないわよ感謝して。

「さすがお詳しいですね!」

「いえいえ、コレばかりしてるものですから」

「では宜しくおねがいします!」

 あ、通信を切られる、でもこれだけは絶対譲れないことがあるわ

「ちょっと待って下さい」

「なんでしょう…?」

「今回の仕事に当たり、一つだけお約束ください」

「なにをですか?」

「今後、絶対に生身で世界のどこにも、顔だけとか一部でも顕現しちゃダメですよ」

「……あはは、はいわかりました」

 せっかく派遣しても即気になって顔だして見たから滅びました! じゃもう色々目が当てられないのよ、いくらなんでも。



 通信終了。

「あー、これから犠牲者探しかー、ぶっちゃけ適性ある人間どのくらいいるのかしら」

 3つ目の世界でようやくS適性で死にかけの老人を見つけて、説得して転生して貰うことにした、まあ説得と言っても拒否権は人間にないのだけど。

 転生後は最初から17歳で、経験と食料、そしてその世界の滅びる前のスタンダードな陸軍装備をもたせておいた、正直過保護だけどソレぐらいじゃなきゃあの世界生き残れないし。


転生して、少し経って世界を覗いてみる。

少年が降り立って10秒でバイクにのった荒くれ者に憑依されてるわね、さすが。

「うーん、でぃすとぴあー…」

もうそういう感想しか出てこなかった、けど私にだってこれからやることはある。


久しぶり羽根を広げ、天界を羽ばたく、目指すはナイのいる場所。

「あいつ、絶対ああなるってわかって世界譲渡して、私に仕事振りやがった」

色々なものを巻き込んだ盛大なイタズラ、さすがに許してはおけぬ。


「ナイイイイイイイイイイ! 覚悟はできてるかああああああああああ!」

神の息吹を放ちながら強襲する…っち、見当たらない! どこだ!?

暫く見渡しても居るはずのナイがいない…ん? 羊皮紙が落ちてきたわね。


【旅行に行ってきます、探さないでネ☆ BY ナイ】


っち、逃げやがったな? 覚えてなさい。

しょうがないけどムカつくので毒龍ヒドラを追いていくわ。

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