昼のできごと

バブみ道日丿宮組

お題:ゆるふわな弁当 制限時間:15分

昼のできごと

「日に日にお弁当が多くなってるような気がする」

 主人公属性を持ったクラスメイトは、そんな悩みを抱いてた。

 机の上にあるのは、5個の弁当。

 もちろん手作りで、作った人間は同じ弁当を自分の分として用意してた。

 みんなニコニコしてて、それぞれが主張する。

「照れなくてもいいじゃない」

「そうよ、名誉のことなの」

「朝起きるの頑張った」

「食べないとハリセンボンの刑だからね!」

「……食べないの?」

 姿形は女子生徒の格好をしてるが、中身は男だ。女装してる男。そんな人にクラスメイトは好かれてた。

「1つあれば十分だから……さ?」

 意味深な表情を浮かべるも、

「……駄目」

 ひときわ小さい男に否定され、

「ほら、あたしの分から食べなさいよ」

 残りの4人がそれぞれのお箸でおかずをクラスメイトの口元へと運んでく。

 拒否することもなくぱくぱくと食べるクラスメイトを見て、自分じゃなくてよかったと思ったのもつかの間、

「君は作ってきてくれなかったの?」

 と、爆弾を作り上げた。

「たくさんあったら困るでしょ」

 ごく当たり前の回答をしたはずが、それはクラスメイトたちにはよろしくなかったようでいろいろな鬼が背後に出来上がってた。

 いやぁ……おかしいでしょ。


「「「「「ぶちころす」」」」」


 やばい声まで聞こえた気がする。

 まともなやつはこの学校にいないのかと教室内を見渡してみてもいなそうだった。

 だって、男子生徒は女装して、女子生徒は男装してる。

 してないのが1割程度だろうか……。

 私もその中の1人で、クラスメイトである彼もその1人である。

「ふーん、あっ。その唐揚げもらっていい?」

「別にいいけど」

 5個分のお弁当はどうするんだろうと疑問を浮かべた私、私たちに、

「やっぱり君のお弁当が一番」

 さらなる爆弾を爆破させた。

 きりきりという歯の音やら、ひらひらという桜の舞う音やら、いろんな音が聞こえた気がする。

 そんな中でご飯を進める彼の度胸は大したものだと思う。

 まぁ私としてもこの状況で一緒に食べるという行為ができてるのは自分でも凄いと思う。

 なんにしても、彼は女装した男に好かれてるということは変わりない。

 彼も彼で嫌がる素振りを見せないから、半年ぐらいこんな感じだ。

 青春の高校生活を期待してたのだけど……こんな殺伐とした彼争奪戦なんてものは見たくはなかった。

 でも、彼のことを思ってるのは一番私が強いってことを見せつけるためにも私は彼の側に居続けようと思う。

 それも……彼の我慢の原価がきるまで……だけど。

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昼のできごと バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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