ライオンがいる教室
バブみ道日丿宮組
お題:女同士のライオン 制限時間:15分
ライオンがいる教室
少子化問題はわりとどこの都道府県でも起こってる。
1クラスに男子が1人しかいないというのも珍しくはなく、今回紹介する学校も男子生徒が1人しかいない。
「どうしたら諦めてくれるんですか」
「あなたが諦めたら諦めるわ」
にらみ合う女子生徒。
その横には戸惑い顔の少年。童顔ではあるが、女子生徒と同じ中学生だ。
「付き合うんだったら私のように優しい人がいいってよく言われてるんです」
「自分で優しいなんていっちゃう辺り、あなた終わってるわね」
むむむむという擬音が周囲に連鎖してく。
クラスにいる他の女子生徒は止めようとはしない。
いつものこと、日常茶飯事なのだ。
「ねぇ、あなたはどっちを選ぶの?」
「そうよ、あなたに決めてもらいましょう」
少年に突き刺さる視線。
自分じゃないと後ろを振り返るが、そこにいるのは女子生徒であって男子生徒でない。ここが3階の廊下であれば、上級生の男子生徒がいたかもしれない。
だが、ここは2階の下級生クラス。1クラスしかない教室には男子生徒というレアキャラは彼しかいないのだ。
「えっと……僕はまだ付き合うつもりはないよ」
にっこりと断ったつもりであったが、
「ほら、あなたのせいで彼が迷ってるじゃないですか!」
「なによ、あなたの笑い方が気持ち悪いから困ってるわ」
ぎょぎょぎょという困り音が少年の中でこだまする。
誰か助けてくれないのだろうかと、視線を彷徨わせる。クラスの女子生徒に視線が重なると、笑われた。つまりは頑張ってねの意思表示だ。どうすることもしてくれない。
今や少年という大きな餌を、メスのライオンが奪い合おうとしてるのだ。そんな殺伐とした空間には他の女子生徒は入りたくはないだろう。怪我もしたくはないし。
「……はぁ」
どうしてこうなったのだろうか。
大人しく男の幼馴染がいる他の中学校へ行ったほうがよかったんじゃないか。
そんな儚い想いが少年の中で渦を巻く。
昨今では女子生徒による男子生徒狩り(性的な意味)が流行ってるという。少年はまさか自分がその対象になりかけてるとは思いもしないし、ありえないと通学前は思ったなかった。
いつ自分が襲われてしまうのかという不安感が日に日に高まってるが、きっと気のせいじゃない。
「ほ、ほら、チャイムが鳴ったから」
双方舌打ちをしたのにち、少年の両側へと歩み寄ると、ちゅっとキスを交わした。
黄色い歓声が上がるわけでもなく、少年がとまどうわけもなく、少女たちは自分の席へと戻った。
これは日常茶飯事。
つまり、毎日のように起こってる出来事なのであった。
ライオンがいる教室 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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